第14話  決裂


 世界会議が連日開かれていた。最近になって、ようやく世界の国々が向き合う事になった。爬鎧類という存在がわかった以上、人類は結束しなければならないと考えたようだ。だが、揉めに揉めている。

 核の廃絶は五年以内に。各国一年以内に大幅な軍縮。天然資源の掘削や使用等の制限。自然破壊ならびに森や海等への新規開拓の禁止。今、実行可能と考えられる事を並べて話し合うが、どの国も首を縦に振らない。なぜヨロイにひれ伏すような事をするんだという意見もある。バラバラだ。軍縮どころか、自国に軍隊を配備し、着々と戦争の準備をしている国がほとんどだ。

 話し合いは決裂。人類は爬鎧類との戦争を選んだ。


 日本では、まず東京周辺の防御体制を固めようと、全国の防衛隊の半数を関東に集めた。国民には疎開を推奨し、なるべく関東から離れるよう呼びかけた。

 次に、全国から民兵を募集。《守られるより守る側になろう》をスローガンに、男女問わず十五歳以上の希望者に、講習、訓練、武器提供を約束した。

 極日大学、岡村教授らの研究から、ヨロイは日本各地の島や山中に潜んでいて、川を下り、海を渡り、用水路等から侵略して来ると予測されていた。その為、関東に向かう道路、川などを戦車隊で固めて、海岸線にも防衛線を張った。予測不能だが、出来る対策は全て実行した。


 高円寺の内田家。

 リビングで立ったまま、父と友美が口論をしている。

「ダメだ! 民兵なんかにはならせない。お前は母さんと福山のおばさんのところに行きなさい」

「なんで? 私十八だよ。もう、自分で判断できるよ」

「母さん一人で行かせるわけにはいかないだろ」

「じゃあ、お父さんが行けばいいじゃん」

「父さんは、元自衛官なんだから、こういう時は行かなきゃならないんだよ」

 友美は納得いかない様子でソファーに座る。父、なだめるような口調に変わり、

「トモ分かってくれ。これから東京は、何が起きるか分からない、危険な場所になる」

「どこにいたって一緒だって、それに何もしないでいるより、戦えるスキルと武器を手に入れたほうがいいでしょ。その方が安心だし、私戦いたいの。守られるより守る側だよ!」

「何でわからない? お前たちが心配だから言っているんだ」

「だったら私も民兵になるわ」

 二人のやり取りを聞いていた母が入ってきた

「いやいや、母さん入ってきたらややこしくなるから」

 父が止める。

「それがいいかも。お母さんと一緒に日本を守るわ!」

 友美も乗り気。

「はー。もう冗談ぬきで話そうよ」

 父が気が抜けたように言うと、母は

「いたって真面目よ。私決めたの、ドキドキしながら息子や旦那の無事を祈りながら帰りを待つより、一緒に戦ってやろうって」

 父、口が開いたままフリーズしている。そこへ母が一言

「守られるより守る側よ」

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