みにくいケモノの子

白ノ光

1 序章:目覚め

第1話

 爽やかな風が頬に当たり、ゆっくりと目を開ける。

 雲すら殆ど浮かんでいない、一面の開けた空が広がっていた。頭の後ろには柔らかな土の感触。どうやら自分は、寝っ転がっているらしい。


 どうしてか、首元を手で押さえる。別段変わりはない。

 少し気になったのだが、どうやら気のせいのようだ。


 潮騒が聞こえ上体を起こす。眼下には人の行きかう街と大きな海が見えた。馬車が道を行き、木造の大型帆船が海上をゆっくりと動いている。


 周囲を見渡すと、どうやらここは山の斜面なのだと分かった。木が乱雑に伸び、人間の手が入ったような道は見当たらない。

 眺めのいい、港町を見下ろす特等席だ。


 どうして俺は、こんな場所にいるんだろう。

 頭が痛く、直前の記憶を何も思い出せない。ただ一つ確かなのは、この風景に見覚えはないということ。馬車に帆船など、この街には似合っているが時代錯誤に過ぎる。これではまるで────


 そう、まるで中世か近代。宇宙旅行も実現するという時代において、ここは明らかに異質だ。街の建物からしても日本のものに見えない。

 不安と興味が交錯し、実際に街へ下りて確かめることにした。


 太陽はまだ、上がったばかりだ。

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