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はっと、目を覚ます。
洞窟のものらしい、ごつごつとして少し明るい天井が、ラッセを優しく出迎えた。
「ラッセ、目、覚ました」
そのラッセの耳に、聞き覚えのある賢そうな声が響く。これは、……ザインの、声だ。冷たい感覚が、ラッセの全身を支配する、その前に。
「良かった」
ラッセを見下ろすザインとイーアの、心配そうな瞳の後ろから、聞き覚えのある声が響いてくる。続いて視界に入ってきた、ここにいるはずのない人物の血の気が見えない顔に、ラッセが感じたのは、胸の温かさ。
「寝ていた方が良い」
起きあがろうとしたラッセを、ネイの細い腕が制する。
「また、熱が出ている」
薄い毛布を敷いただけの冷たい地面に横になったラッセに薄い毛布を掛けてくれるネイの、その小さな手を、ラッセはただただ呆然と、見つめた。
馬車を引く驢馬を得る手段が無く、ザインの故郷までは歩いていくしか方法が無い。ラッセの熱が下がるまで、当分ここで野宿だな。ネイの言葉にぶーぶーと文句を言う、新参の女の子の声を、夢現に聞く。昨夜のことは、全て、夢、だったのだろうか? 子供達を宥めるネイの、華奢な背に、ラッセは首を横に振った。いや、あの黒の刃から伝わってきた、肉を断つ生々しさは、……本物だった。
だが。では、なぜ、致命傷を負ったはずのネイは、今、ここに、……生きている? 疑問だけが、ラッセの脳裏をぐるぐると、回っていた。
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