4 寄宿学校で出会ったかけがえの無い友人
そんな生活が数年続いた後、十歳の時に俺は寄宿学校に入った。
途中から入る場合も多いが、俺は最初の学年からと決めていた。
何より、早く外に出たかった。
休みの都度、養父母は帰って来い、と言い、迎えを寄越した。
それも三、四年経った辺りで学内活動や勉学やスポーツを理由にして、できるだけ寮に残ることにした。
時には友人の家に休暇中世話になることもあった。
そう、友人は沢山できた。
最初の学年からということは、この横のつながりが一番広がるということだ。
俺は実の父親譲りの頭を生かし、やはり医師の道に進もうと心に決めていた。
子爵家の方では、俺には経済分野の方を学んで欲しがっているのが判っていたから、それはそれである程度こなしていた。
数字を扱う学問であることが幸いした。
その一方で、文学だの歴史だのには弱かった。
特にただ暗記するのではなく、何やら時と場合において使う何とやらとか、古典文学がどうとか、そんな教養面においてのものなのだが、まあこれが俺には向いていなかった。
この時の同室の友人、リチャード・レイベンが呆れた。
いずれ後期の学年になって二人部屋になった時には一緒に組もうぜ、と言っている程に気の合う奴だった。
夏の休暇にはお邪魔したこともある。
「いくら数学や生物や化学の分野が強くても、赤点になっちゃ不味いぜ」
「じゃあどうしろって言うんだよ」
「うーん。じゃあこうしよう。ほら、お前も前ちょっと会っただろ? 俺の妹がだな、お前とは逆でそういうものが無闇に好きなんだ。放っておくと手紙にそういう話ばかりずらずらと書き出すから、ちょっとお前ら文通してみろ」
それで成績が上がるのか?
と思ったのだが、これが意外な程に上がった。
リチャードの妹のサリーは彼のきょうだいの中でもとびきりの文学系少女なのだと。
しかも、その文学に歴史を絡めると、その知識量には俺も驚いた。
手紙の文章は――淑女とは決して言いがたいのだが、いやそれだからこそ面白い。
「サリーは小説家になりたいんだと」
「へえ。でも何もご両親は言わないのか?」
「まあうちはきょうだい多いしなあ。一人くらい変わったのが居たっていいよな、っていう感じか」
だからだろう。
彼の家に行くと、とてものびのびとできる。
レイベン家は帝都近郊に彼の父親の代になって越してきた新興実業家なのだが、
この家に行くと常に笑い声が絶えない。
長い休暇の時に行くと、使用人に交じって果樹園で収穫をしている彼の母に出会うことから始まる。
これが養母だと、まず迎えを寄越し、先触れをし、その後居間まで顔は見せない。
まあ俺もその方がいいのだが。
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