悪役令嬢に転生したけど、ストーリー完結後でした
@サブまる
第1話 記憶を取り戻しました。でもストーリー終わってました。
ドドドドン!!
私は家の階段から滑り落ちていた。
その瞬間、走馬灯が走ったのだが、それは私の見たことのない景色ばかり。
そして気づいた。これ、前世の私じゃん! と。
「お嬢様!? 大丈夫ですか!?」
あら!? 超イケメン!! 焦った顔をして、私に駆け寄る男。第一印象はそんな感じだったが、どうやら、前世の私はこいつのことが嫌いだったらしい。
この男『レオポルド第3王子』は、私が作中で最も嫌いだった悪役令嬢『ウォレット・ヴァレンタイン』の夫だ。
ヴァレンタインには、殺意を抱くほど邪魔をされまくった。運営に「こいつの出現頻度下げろ!」と、怒りのあまり、メールを送ったほどだ。
なんとか邪魔を回避し、やっとの思いでトゥルーエンド。しかし、悪夢はまだ終わってなかった。
そんな奴にあろうことか、エンディング後のストーリーで、求婚した男がいて、しかも結婚したとか言うのだ。それがこいつ。
運営さん何考えてるの? 事あるごとに人の邪魔してきた女に、自分をめちゃくちゃ愛してくれる超イケメンの王子様が、好きになるはずないよね?
私は嫉妬で怒り狂った。そして、当然炎上した。
「えぇ、大丈夫ですわ……あいたたた」
「大丈夫じゃありません! すぐに医者を呼びましょう」
そういうと、私の体がふっと浮かび上がった。
「きゃあ?!」
「どうされました?」
いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
てか、え、まって……私、大丈夫ですわとか言った? しかも違和感なく……。
天井高え……どこの城だよこれ……え!? 執事何人いるの!? そんな感じでキョロキョロしていると、
「お嬢様、やはり頭を強く打たれたようです。急いでお部屋にお連れします」
整理のつかないまま部屋に連れてこられ、ベットに横にされる。痛いのはケツで、他は別に痛くないんだけど。
にしても、やけに心配してくる。この王子ってこんな奴だったけなぁ、まぁ、イケメンに看病されるとか最高のシチュだけど。
ストーリーのモブとしてチラチラっと見たことはあったが、ストーリーに関わるようなやつではなかった。パーティーで軽く挨拶したくらい?
しかも、その時はやたら無口でクールで、近寄り難い一匹狼って感じだったのに。
そうそう、だからこそムカついたのよ。
なんでレオパルドとあいつがくっつくわけ!? ってね。しかもレオパルドの猛烈なアプローチによって、とか説明されてんだもん。
………………………………えっ?
「ところであんた、私のこと好きなの……?」
「何を今更おっしゃいますか。3年かけてあなたを口説き落としたのはこの私、レオパルドですよ。あなたより大切なものなど、この世には存在しません」
やだ。キュンとしちゃった。私のお手手にキスなんかしちゃってさ。
て、待て待て待て!! え?!
バッと起き上がり、近くにあった鏡の前に走る!
「お嬢様! 激しく動かれるとお体に触ります!」
バサバサのまつ毛、ルビー色の瞳、真っ白な肌、筋の通った鼻。可愛らしい唇。絹のような銀色の髪の毛。
間違いない。極悪の性格のくせに、なぜか作中で最も可愛い設定にされてたあの……
「ヴァレンタインだ……」
「ベットに戻りましょう?」
「あんた!? 今すぐこんな女と別れなさい?! こいつは性格最悪で、事あるごとに私の邪魔をして、一ヴァレンタイン去ったらまたヴァレンタインって言われてたぐらい人を貶めるのが大好きな、性根の腐った女なの!! 見た目に騙されちゃダメだわ!」
「おやおや、少しベットに横になりましょうね」
鏡を差しながら私が叫ぶ。レオパルドは優しくそれを宥めた。
え、何言ってんの私。鏡の前に立ってるのは私で……鏡に映ってるのはヴァレンタイン……てことは……ヴァレンタインが私で……でも、ヴァレンタインは私が一番嫌いだったやつで……
しかもこれ、ストーリー完結後の世界じゃん。
バタっ。
その後、私は三日寝込んだ。
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