計画離婚

第1話 授かり婚

莉子はとても厳しい家庭で育った。五人兄妹の長女。下の弟は年子だが、長男だからと少し甘やかされている。その下は4才離れている妹。そして七才離れた妹。最後は十才離れている妹だ。

農家を営んでいる両親に変わり、朝早く起き朝ご飯の支度と弟、妹達を起こし、毎朝忙しく自分の身支度さえもまともに出来なかった。

母親は野菜づくりと、近所のパン屋で働いていて、仕事が二交替で、殆ど顔を見たり話をする機会がなかった。

父親は厳格で、やはり農業の米作りをしながら、電信柱を作る会社で働き、二交替勤務をしていた。

父親は仕事を家に持ってきては常にイライラし、父親も母親も子供達の事は殆ど長女の莉子に任せっきりだった。


✤✤✤


莉子は早く家を出て自立がしたかった。

家では両親の顔色を常に伺い、自分のことよりも軟弱な弟を始め、妹達の面倒を優先してきた。そんな毎日から解放されたかった。

高校生になると、家族の目を盗んではこっそりタバコを吸ってみたり、少しHな小説を買っては読み、早く大人になりたいと思っていた。


そして高校卒業。

就職先は本当は県外に行きたかったが、両親の猛反対で家から通える製造会社に勤めることになった。

莉子はいつも自分の感情を押し殺し、家族の為に頑張ってきた。が、社会人になり少しだけ自分の世界が広がり、毎日が充実してきた。


そんなある日一つ年上の金髪の先輩に声をかけられる。

みんなは怖がり仕事の話以外はなかなか話さない先輩。類は友を呼ぶで、似たような人達しか集まらない仲間たち。

名前は龍也。

そんな存在の龍也に、莉子は声をかけられとても驚く。


初めは食事に誘われた。怖いから莉子は断れなかった。

次は映画に誘われた。

その次はドライブに誘われた。

話をしている時に龍也は、思いっきり笑ったり、楽しい話をしてくれた。それはまるで子供のように、とても無邪気な笑顔だった。

そのうち莉子も心を少しずつ龍也に開いていった。


莉子は男の人と付き合うのは初めてだった。

厳しい家庭環境に育ち、まだ自分の殻に閉じこもったままの莉子は、自分にはない自由奔放の龍也にひかれていった。

そして後にホテルやアパートにしょっちゅう行くようになった。


莉子の家は門限が夜の九時。最も楽しい時間に、龍也はいつも家の前まで送ってくれた。それは龍也も莉子も不満だったが、家族に嫌われない為に時間は守っていた。

そんな時莉子は、体の異変に気付く。

つわりだ。

両親の顔を見ると気持ち悪くなるし、ご飯も以前のように食べられない。

弟、妹たちは莉子の異変に全く気づかなかったが、母親だけはさすがに気付いた。

莉子は必死に謝る。

母親はショックを受けるが、授かった命。見捨てる訳にはいかない。


そして莉子は初めて龍也を家に連れてきて紹介した。

龍也は金髪はさすがにダメだと思い、黒髪に戻していた。


莉子の父親は怒りをこらえながら話しをする。母親は涙をこらえながら黙って話し合いに参加。

龍也は謝りながら結婚したいと申し出た。


莉子の両親は形では反対していたものの、命を下ろすのはさすがに出来ない。そこで莉子が二十歳になるまで結婚は許さないと父親は言い、莉子が二十歳になるまで待った。


そして晴れて二十歳と一ヶ月でようやく龍也と莉子は結婚した。お腹の子供は六ヶ月になっていた。

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