深夜の料理の謎
三日月黎
K高校文芸部の静寂
午後四時三十分。K高校文芸部はとても暇な時間を過ごしていた。
目の前にいるインテリ風な男、
もう一人の無表情な男は
おかしい点を挙げるなら、人が少なすぎるという点だろう。真夏ではあるもののこれほど人が少ないことは、重ね重ね言うが少ないのだ。
おそらく、理由としてあげられるのは、クーラーが壊れて効かないこと。また、第二校舎の三階にも関わらず、風が一切吹かないことだ。しかし、それは第二校舎の位置が悪いことや、点検に来る業者が遅いのが原因である。
それでも、ここまで気まずくなるほど人の入りがないことはなかった。二人の様子を伺うも、いつもとなんら変わりがない。ただ静かに書と
わたし
あいにく、わたしはこの沈黙をあと一時間半耐えれる自信がないため、帰るのもありだと思い始めていた。事実、することもないので帰ろうと思ったのだ。
「皆さん、お揃いかなぁ。こんにちは!」
テンション高めに現れたこの人は
「ふむ、今日は人数が少ないね。四人とは……。
元気そうに部員が少ないこと言われても、どうにもならない。先輩なりに、ここにいる自分たちを励まそうとしているのかも。
「相変わらず、ハイになってるようで悪いが、少し黙ってくれるか?」
「えへっ、黙らないよ。今日のわたしは恐怖の赤点補習だったから、もうテンション振り切ってるの」
「えっ、先輩それで遅れたんですか」
思わず言ってしまった。先輩は基本部活で最初に来ているし、補習なんてものをするイメージがなかった。偏見だが、部長だし頭が良いと思ってたのだ。
「そうだぞ、藍川。こいつはおバカなんだ。部長だから、賢いという偏見は古いぞ」
よく分からないが叱られた。天下の生徒会長がそういうことを言うのは容認しているようで少し問題があると思う。
「武田にそう思われるのは
「とっておきですか?」
「うん、今日はいっぱい喋りたい気分だからね。この文芸部に喋っちゃダメなんて規則ないし。それに、顧問の
「お腹は緩いだろ? お前、本当にディスりすぎだぞ。一応、俺生徒会長なんだが」
「ふふ、そんなことでわたしを止められないよ。で、武田はおいといて、どう? わたしの話聞きたい?」
ここで断ると泣きつかれそうな予感がする。さっき、彼女の赤点補習という傷をえぐってしまった罪もあるし、聞こうと思った。
「いいですよ」
「うぅ、冬ちゃんは優しいね。那須くんはどう?」
「よし、多数決の原理で上杉と武田のサラブレッドには帰ってもらいます」
「別に反対してないだろ。ってか、上杉と武田のサラブレッドってなんだよ!」
「だって武田言ってたじゃん。うちの両親は武田信玄が好きで、上杉謙信も尊敬していた。だから武田謙信だって」
「それは言ったが、無闇に人の言った話を掘り下げるな。こう見えて日本史は苦手なんだよ」
首肯の那須がぶんぶん首を振って頷いている。那須も日本史が苦手なのかもしれない。というよりも武田先輩の日本史嫌いが意外だった。確かに名前負けしやすい名前をしている先輩だが、三年生では成績トップだったはずだ。いやはや、生徒会長も苦労してるんだなとしみじみ思う。
「藍川、生暖かい目で見るな。ったく、どうなってるんだ、この文芸部は」
と言いつつ、文芸部に参加するために、多忙な生徒会の仕事を高速で終わらせるこの先輩は、案外この時間が癒しとなっているのかもしれない。ツンデレなのか。
「ということで、満場一致! さてさて、今日はあっついし、もう
凛華先輩が怖いネタを持っているふうに思えないが、皆彼女の声に耳を傾けた。
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