第8話本心

「最近うまくいってるのか?」

「うまく行くも何も、旦那とはもうずっと変わらないわよ、夫婦らしい事なんて何もないわ?

相手も私も自分の事で忙しいもの、

お互いに関与する事に疲れちゃったのよね。」

「最初だけよ、甘い時間を共有できたのは・・・」


うまく行ってない事なんて、答えを聞く前からわかっていたのに、少し意地悪な質問をして、みかの表情が曇るのが嬉しかった。

全てとは言わないが、まだ共感できる事がある事も嬉しかった。

しばらく他愛もない話が弾み、

時折見せる仕草に見惚れながら、この時間がいかに大切かを噛み締めていた。


「そんな事より、かつが結婚した事、私は納得いかないわ。」

冷たく言い放つ。

唐突な一言に、呆気に取られる暇もなく、

畳み掛けるように言葉を放つ。


「かつは、ずっと孤独よ、かつは自分が自分じゃなくなる事を恐れてるから、かつは誰か一人の物にはなれない。もし誰かと一緒になれても、それはかつが本当に望んでる物ではないわ。」

「みか、少し酔いすぎだよ。」

一番触れられたくない場所を、なんの躊躇いもなく抉られた。

ただ、みかだけは、全てを理解した上で、こんな自分と同じ時間を共有してくれる事が全てを忘れてさせてくれた。

「みか、オレはお前の事が好きだ。」

唐突に出てきた言葉ではあるが、この言葉が嘘ではない事だけは確かだった。

「なによ今更、前からずっとそうだったでしょ?私はわかっているわ。」

その答えを聞いた時、やはりみかと二人で居られる時間は自分を隠さずに居られる唯一の時間なのだと確信した。

「今日はまだ一緒に居よう。」

顔を項垂れたまま、頷いた。

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