第7話心惑

なんとも言えない気持ちに、ざわつきが隠せず、ついついお酒が進んでしまう。

「急にどうしたの?呼び出したりして。」

「いや?特に意味はないよ。

いつだってオレ達が会う時はいつも急だろ?」

「確かにそうね、詮索するのは野暮よね。」

静かに言葉を漏らした。

グラスに伸びた手は華奢で白く、美しく、派手なネイルと薬指に光る指輪が、余計に心をくすぐられる。

みかとは、このバーで出会った。

お酒の好みも同じで、色々話してる内に意気投合し、仲良くなるまでそう時間は掛からなかった。

「かつ?最近裕也とは飲んでないの?」

「いや?前も誘われてここに来たよ、ただあいつを見ていると、楽観的にいつも過ごしている事が羨ましくて、そうは生きられない自分に押し潰されそうになる。

それに好きでもない、スコッチを飲まなきゃならないし。」

「それでも裕也の事は大切な友達でしょ?」

「そうだな、あいつはオレとは違いすぎるから、オレには必要なんだよ。」


みかはどんな時も、味方でいてくれて、

理由はないが、みかと一緒に居れる時はいつも、包み隠さず自分を曝け出せる。


そして、みかの言葉のトーンや、匂い、仕草に心を揺さぶられる。

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