5日目

 無事に子供が2体生まれました。

 沙智は喜びましたが、子供のうち1体は、体が赤いイレギュラーでした。赤い子供はすぐに、ケイビヤに連れ去られてしまいました。


 沙智はしばらくケイビヤに抵抗してわめいていたが、やがて諦めました。

 そして、透哉を睨みつけて言いました。

「あなた、身体が赤いイレギュラーの遺伝子を持っているんでしょ! だからこんな子が生まれてしまったんだわ! 私は追放なんて嫌だから、今後一切私に関わらないで!」

 沙智は怒ってどこかに行ってしまいました。


 透哉は沙智に対して、特に思い入れも無いので、去っていく沙智の背中を見ているだけで引き留めはしませんでした。それに、どうせ遅かれ早かれ仕事に行かなければならないので、二人が離れるのは最初から決まっています。


 残った子供が目を覚ますと、透哉は自分がしてもらったのと同じように言葉を教えました。そして、子供が言葉を使えるようになったので、透哉は仕事に行きました。


——そういえば、お父さんもこうやって仕事に行ったきり、もう会うことはなかったな。それに多分、もう死んでいる。僕もそうやって、子供に忘れられてすぐに死んでいくんだな。


 透哉は今日もミトドケヤクとして、6日目のギアを見守り、7日目のギアのお墓を作りました。

 仕事を終えると、いつものようにオカネヤが金の石を運んできたので、1割をカイシュウヤに渡し、残り全ての金の石を決められた区画に埋めました。


——これで仕事も終わりか。明日になれば今まで貯めてきた金の石を掘り返して、自由になれるぞ!


 目前に迫った自由に、透哉は胸を躍らせます。

 時計の針は24を指し、ついに6日目のギアになりました。


 透哉に自由は訪れるのだろうか。


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