ナノカジマ

石花うめ

ギア

 あるところに、ナノカジマという小さな島がありました。


 味気の無い荒れた大地が広がるその島には、「ギア」と呼ばれる生き物が住んでいます。

 ギアは、丸い頭に、胴体からは腕と脚が二本ずつ生えていて、二足歩行をする生き物です。言葉を話すこともできます。

 人間に似ていますが、人間ではありません。

 それは、彼らが生まれたときから全身真っ白で、さらに体長や体重が全員同じ、食事も睡眠もしない変わった生き物だからです。

 さらに、顔には目や鼻や口がありますが、生まれた瞬間から真っ白な仮面を被るので、見た目の区別がつかなくなります。そのため、仮面に識別番号と名前、オスかメスかといった情報を書くことで個体を見分けています。

 ちなみに、なぜ仮面を被らなければいけないかというと、過去にこの島で疫病が蔓延したとき、予防のために仮面を被るルールを作って、それが今でも続いているからです。

 疫病がなぜ流行ったのか、そのルールを作ったのは誰なのか、それは分かりません。しかも疫病騒ぎはすでに収まっているので、本当は仮面をする必要は無いのです。

 しかし、ギアはとにかくルールを守る真面目な生き物なので、現在もそれに従って生きています。


 今日もナノカジマに、一体のギアが生まれました。


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