意外とお似合い?
「フフ……でしたら、このまま私を軟禁していただけますでしょうか?」
そう言うと、クラウディア皇女はクスリ、と笑った。
「なるほど……確かにこのブルックスバンク家であればヘカテイア教団の連中を全て排除できますし、何より僕達とクラウディオ殿下が今後について話し合っても、聞かれる心配もないですからね」
それだけじゃない。
クラウディア皇女が僕達の下にいることで、連中は彼女を奪還することに集中しなければならなくなった。
つまり、それだけ僕達も対処しやすくなったということ。
本当に、クラウディア皇女は優秀な方だな。
「はい。特に、我がブリューセン帝国は父である皇帝陛下をはじめ、多くの方がヘカテイア教団に傾倒してしまっておりますので、私の周りには味方がいない状況ですから……」
そう言うと、クラウディア皇女が視線を落とした。
……彼女も彼女で、つらい立場にいるんだろう。
「かしこまりました。このギルバート=オブ=ブルックスバンク、クラウディア殿下を精一杯おもてなしさせていただきます」
「フフ……ありがとうございます」
恭しく一礼する僕に、クラウディア皇女はニコリ、と微笑んだ。
すると。
――コン、コン。
「坊ちゃま、ブリューセン帝国の使者、それにニコラス殿下がお越しになられ、面会を求めております」
「あの馬……そ、そうか」
思わず馬鹿王子と叫びそうになったが、婚約者となるクラウディア皇女がいる手前、僕は慌てて言葉を留めて平静を装った。
しかしあの王子め……どうしてこう僕の邪魔をしてくるんだろうか。
「ニコラス殿下がいらっしゃっているのですか?」
「? クラウディア殿下?」
第一王子の名を聞いた瞬間、クラウディア皇女の瞳が輝く。
え? ひょっとして? 嘘でしょ?
「……ニコラス殿下をお通しいたしますか?」
「は、はい……お願いします……」
僕がおそるおそる尋ねると、彼女は頬を赤らめながら頷いた。
ええー……こんな才女のクラウディア皇女が、どうしてあんな奴に?
い、いや、もちろん政略結婚するんだから、二人が上手くいくのは全然いいんだよ? いいんだけど……。
僕は思わずチラリ、とシアを見やると……あ、目が合った。
でも、シアも苦笑しながら肩を竦めるところからも、どうやら僕と同じ気持ちのようだ。
「あ、あの……失礼ですが、クラウディア殿下はニコラス殿下のどのようなところを、その……気に入られたの、ですか……?」
本当に失礼だとは思いながらも、気になって仕方がない僕は彼女に尋ねた。
「あ……フフ、だって美味しそうな
「そ、そうですか……」
クスクスと笑うクラウディア皇女を見て、僕もシアもこれ以上は何も言えなかった。
ま、まあ、好みも
◇
「小公爵よ! これはどういうことだ!」
モーリスに言って屋敷へと入れた途端、第一王子はすごい剣幕で食ってかかる。
まあ、こんなことになるだろうとは思っていたけど、相変わらずワンパターンだなあ。さすがに飽きてきた。
「フフ……違うのです、ニコラス殿下。ギルバート様は、この私を守るためにあえてこうなさったのです」
「ど、どういうことですか……?」
クラウディア皇女の言葉に、第一王子は困惑の表情を浮かべる。
なので、彼女はヘカテイア教団に関しての肝心な部分を伏せつつ、事情を説明すると。
「何だと! この王国でそのような真似を……! 許せん!」
単純馬鹿な第一王子は、すっかり乗せられて憤慨している。
その隣には、そんな彼を手玉に取ったことでご満悦のウラウディア皇女。あ、この二人、お似合いかも。
「そういうことですので、クラウディア殿下にはこのまま軟禁という
「分かった……だが、万が一
「ハア!?」
僕を睨みながらそう告げる第一王子に、思わず声を上げた。
「何だ? クラウディア殿下との間にやましいことがないのであれば、問題はないだろう?」
あー、なるほど……要は僕とクラウディア皇女の仲を疑って、嫉妬しているんだな。
というか、僕にはシアしかいないのに、何を失礼なことを考えているんだよ。
「……ニコラス殿下のおっしゃるとおり、クラウディア殿下のことに関しては何も問題はありません。ですが、僕とシアの二人だけの空間にとって、殿下は邪魔なのですよ」
「っ!?」
苛立ちのあまり、つい殺気を向けてしまう僕。
ハア……ただでさえ最近はシアとの二人だけの時間を邪魔される機会が多いというのに、ここにきてこの馬鹿王子は……。
「ギル、でしたらクラウディア殿下とニコラス殿下には、離れのゲストハウスを利用いただいてはいかがですか? あそこであれば、お二人を邪魔する者もおりませんので」
そう言って、ニコリ、と微笑むシア。
あはは、あなたも僕と同様二人が邪魔なのですね?
「それはいい提案です。是非そういたしましょう」
「うむ、最初からそうすればよかったのだ!」
「フフ、ありがとうございます」
居丈高に頷く第一王子と、蕩けるような笑みを浮かべるクラウディア皇女。
そんな二人を、僕とシアは遠い目をしながら眺めていた。
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