神話の時代の物語


 この世界に海と河、大陸しかなかった頃、神様は世界に人を創り出そうとしました。


 しかし、生命を誕生させるのは世界の創造主である神様でもあまりに難しく、何度も失敗してしまったのです。


 身体が生まれず、魂だけとなった生命は神の手によって河から海へと流されました。


 だから、煌めく魂が流れた河を“天の河”、魂がすぐに世界の流れに戻ることができずに漂ってしまう海を“星の海”と呼びようになったのです。


 何度も失敗し、長い年月が経ちました。


 星の海は煌めきを忘れず、天の河もまたその役割を終えることがなかった時、漸く神の手によって生命が誕生したのです。


 しかし、生まれた生命は優しすぎて世界で暮らせるほど心が強くありませんでした。


 また、衰えも死ぬことも知らない生き物として誕生してしまったのです。


 神様は心優しい失敗作が後から生まれてくる生命に傷つけられることのないように遠い遠い星の海の最果てにある島に閉じ込めました。


 永遠の時をその島で過ごすようになった神話の時代の失敗作、ミスは誰もいない、命一つない最果ての島で1人寂しく暮らしていました。

 

 ある日、最果ての島の海岸に1人の少女が流れ着いて、ミスは彼女を一生懸命看病しました。


 元気になった彼女はもともと住んでいた大陸に戻ることになり、ミスは彼女の願いを一つだけ叶えて彼女を送り出しました。


 それから長いようで短い時が経ち、少女は大人に、世界で番、綺麗に輝く星の子となって再びミスの前へと現れ、彼女とミスは死ぬことのない長い時を一緒に、幸せに過ごしたと言われています。


 家族を捨ててまでしてミスと共に永遠の時を生きることを選択した彼女の名は、メシア。


 彼女は星の子達の間で救世主と呼ばれています。


 星辰教 聖書書架第125連5段目

 『神話の時代の物語 神の失敗作』抜粋

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星の子の神話 紅花 @Koka-Beni

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