第91話 ルブスト 03
俺は怒りの感情に震え、彼女を抱きしめて言った。
あなたは何も悪くない!!
あなたのおかげで救われた命もある! あなたのおかげで生きている人もいる! あなたは、間違っていない! だから自分を責めるのはもうやめろ! あなたが死ねば悲しむ人がたくさんいる!
彼女は泣いていた。
そして泣き止んだ後、彼女はいった。
「ありがとう、私はもう少し生きてみようと思う。いつか、きっと間違いだったとわかる日がくると思うから……」
そういうと彼女は、俺の腕の中で気を失った。俺は、メイテさんを抱きかかえて地上に戻った。彼女の怪我は思ったより深刻だった。
このまま放っておくわけにはいかない。
俺は、彼女を一旦宿に連れて帰ることに決めた。
俺は、メイテさんを宿の部屋へと連れ帰りベッドに寝かせ、メイテさんの手を握ったまま、彼女が目覚めるまでそばにいた。
しばらくして、彼女が目を覚ました。まだ、意識がはっきりしていないようだ。
俺は、彼女に優しく声をかけ続けた
「大丈夫ですか? 痛いところとかありませんか?」
「あ、あのここは?」
「安心して下さい。俺の泊まっている宿屋です」
「あ、ああ、そういえば私、襲われて……」
「ええ、無事助けることができました」
「そ、それで、わ、わたしは、ど、どうなって……」
「ああ、かなり危険な状態でした。
ちょっと待っていてください」
俺は、アイテムボックスからポーションを取り出した。
「これを飲んで落ち着いて」
「これは?」
「薬です。体に悪いものではないので心配しないでください」
といって、メイテさんに飲ませた。
「うっ……」
メイテさんは苦しそうな表情を浮かべたが、すぐにおさまったようで呼吸が穏やかになった。
「これで少しすれば痛みも引くと思います。でも無理は禁物ですよ」
「はい、わかりました。本当に何とお礼を言っていいのか……」
といいつつ彼女は、俺の顔を見つめていた。しばらく見つめた後、ハッとしたような顔をしたと思ったら、急に慌て始めた
「あ、あの、ご、ごめんなさい!」
俺は意味がわからず首を傾げた。すると、メイテさんが真っ赤になって説明してくれた。どうやら俺は、彼女の手をずっと握っていたらしい。恥ずかしさのあまり俺は思わず手を引っ込めてしまった。その様子に、彼女はさらに申し訳なさそうな顔をしながら謝ってきた。
「あの、メイテさんを襲ったのは? やはり教会の?」
「…はい。 教会の関係者です…」
「教会に復讐したいとは思いませんか?」
と俺が聞くと、 彼女は迷わず答えた。
「いえ、私は教会と決別します。これからはただの治癒術師として生きていきます。そして、もし私にできることがあれば、お手伝いさせてください。なんでもやります!!」
と力強く宣言した。
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