第64話 環は樹とイチャイチャする
今日も今日とていつもと変わらぬ光景だった。いや、もっと酷くなったか。葉山グループによる会話が非常に耳障りである。俺が聞かないフリをすると、葉山が段々調子に乗って殊更に声を大きくし、俺を遠回しにディスる。野球部の真斗が俺の顔色を窺って難しい顔をするが、葉山が話を盛り上げていった。そして彼に同調するはゴリラ。周りのギャル3人はどうでもいいといった反応だ。
予鈴が鳴る前も、昼休みも、放課後も、葉山は俺を意識した発言をする事が多くなった。
そんな彼らの会話を耳にした環奈とその友達二人(三上、立崎)。この間助けた写真部のエースこと西山も穏やかな表情ではない。
俺もずっと奴らの暴挙に我慢してきたのだが、
葉山にはいつかお灸を据えてやらねばならないという気持ちが湧いてきた。
今じゃないが、いつか必ず。
でも悪いことばかりではない。
環奈は俺の彼女となって、俺は環奈の身体を全部知り尽くしていて、貪りまくっている。胸のどこにホクロがあるのか、胸のサイズとか、絶頂に達するとき、どんな顔を晒すかまで知っている。もちろん環奈も俺の全てを知っていると言っても過言ではないほど俺を強く求めている。
俺たちの関係がバレたら奴はどんな反応をするのだろう。
別に俺に悪口を言わなければ、奴が死のうが生きようが俺の知ったことではないが、彼の態度を目の当たりにすりと、俺の心の中で眠っているドス黒い感情が芽生える気がする。
だが、俺には奴の言葉によってもたらされたストレスの捌け口は存在する。
放課後が楽しみだ。
X X X
高級レストラン
俺と環奈はジムで身体を鍛えたのち、地方から戻っきた環さんに誘われて、高級レストランで夕食を食べることにした。
「でさでさ!取引先の社長の目がエッチすぎて吐き気がしたわよ!」
「……」
「でも、樹と撮った写真チラつかせたら、大人しく黙り込んだの!」
「……」
「ダメだったら樹に電話かけようと思ったけど、丸く収まってよかったわ……うふっ」
明るすぎる環さんの話に環奈は怒りを抑えるように貧乏ゆすりをしながら俺たちを睨んでいる。
「お母さん……樹にくっつきすぎじゃない?」
環さんは爆のつく極上の触り心地を誇る自分の胸に俺の腕を沈めてこれ見よがしに俺をロックした。そんな俺たちを見た向かい側の環奈が待ったをかけたわけである。
娘が見ている前でこんなイチャぶりは正直心臓に悪いけど、俺が振り解こうとすると、環さんの大きすぎる胸がクッション代わりに衝撃を吸収してくれるので、結局無駄だった。
私服姿だからいいものの、もしこれが制服姿だったら殺風景だったりするのだろうか。
いや、環さんはどう見ても20代半ばに見える美貌の持ち主だ。恐らく姉妹二人が弟と仲睦まじくスキンシップしているように見えるだろう。
制服でも私服でも、周りにバレる危険性がない分、環さんはやっぱり凄いと思う。でも、ベッドでは俺に主導権握られるからそのギャップがまた……
おっとだめだ。
いくらエロ漫画の世界の中だとはいえ、このシチュエーションは、俺の今までの経験をもってしても違和感が感じられる。
勿論、この二人の親娘と一緒にいると溜まったストレスが吹っ飛んでいくのは確かだが、俺は二人と実に激しい関係を持っている。
俺はこの親娘の身体を貪り尽くしたのだ。
やっぱりこれは確認しといた方が良かろう。幸い、構造上、俺たちの声が他の席に座っている客に聞こえることはない。
俺はわざとらしく咳払いして、環さんに聞こうとしたけど、先手を打たれた。
「そういえば、樹の両親って海外旅行中だったわよね」
「は、はい」
「ふふ」
「「っ!!!」」
頬杖をついた環さんは妖艶な表情で俺たちを交互に見た。まるで昨日の出来事を全部見守っていたかのような面持ちだった。
最初こそ自分の母を問い詰めてきた環奈は、頬を赤く染め上げ、視線を外しモジモジしている。
自分の娘が困っている姿を見るや否や自信に満ちた表情で、もっと俺との距離を詰めてくる環さん。
第一ターゲットが撃沈されたことでさっそく第二のターゲットに狙いを定める狡賢い彼女に俺は嘆息を漏らした。
「樹、私の娘を困らせたら許さないわよ」
「……あたり前ですよ」
「私も困らせちゃダメよ」
「どう言う意味ですか」
「そのままの意味。私に何も言わないなんて、関心しないわね」
と、小悪魔のような口調で囁いてもっ俺の腕を自分もマシュマロに沈めていく環さん。
俺はそんな彼女に向かって、俺の頭を悩ませいた疑問を口にした。
「そろそろ、俺たちの関係性を明確にしてみてはいかがですか?」
追記
ほほほ
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