ギャングスタ桃太郎
リタ・ワーサー
ギャングスタ桃太郎
昔むかし。
あるところに腕利きの醸造家であるビッグGと、桃農家のオーヴァがおりました。
二人は
しかしながら、極めて無知蒙昧な民衆のため、「酒は
二人は
じつはこっそり、二人で楽しむぶんはつくっていたのですが、ベッドの下に隠していたためにばれることはありませんでした。
そうしたなかでもGさんとオーヴァさんの間には愛が育まれ、子宝に恵まれたのです。
見た目は元気な男の子でしたが、ミオスタチン関連筋肉肥大、という
Gさんとオーヴァさんは愛する息子を救うべく、懸命に働き治療にのぞみました。
なんとか男の子は育っていきましたが、生活は苦しくなりました。
この病気は筋肉がものすごく大きく強く育ちすぎるので、たくさんの栄養が必要でしたし、詳しいお医者さんも多くなかったのです。
そのため、二人は
■
Gさんとオーヴァさんの密造酒は少しずつ人気を上げ、そのうち酒を好む
おかげで少しずつ男の子の家は裕福になり、なんとか男の子も病気とともに人生を歩んでいくことが出来そうになってきました。
ひと安心した夫婦は、男の子にようやく名前をつけました。
キービィ。
なんか響きはラッパーみたいですね。
キービィはすこし汚いお金ですくすくと育ち、ジュニアハイスクールを卒業するころには180cmを超す
マーヴェル映画を見て始めた
ところがハイスクールに入って4ヶ月ほど経ったとき、件の
キービィのお家の密造酒もお金のながれからばれてしまい、両親は
お金はキービィの治療に使われ、あまり貯金できておらず、罰金をはらうことができなかったのです。
キービィは怒りに燃えました。
■
怒りの中でキービィは地元の
密造酒を
偉大なる
「
キービィはうっすら生涯を搾り取られる予感がしましたが、なにより両親が心配だったので首を縦に振りました。
おまけに借金で首が回らなくなったから、と鉄砲玉代わりの
なかなか洒落たデザイナーの手によるのか、少し露出の多いアメコミヒーローのようにも見えました。
「私は偉大なる
せっかくなのでキービィも
命をかける以上は、とキービィはスキットルに忍ばせたGさんとオーヴァさんのお酒で盃も交わします。
キービィは少しだけ温かい気持ちになりましたが、傍から見ればマッチョとボンテージの男がひとつのスキットルからお酒を飲んでいたので、少しキツい絵面でした。
■
キービィと
偉大なる
情報屋は汚職で落ちぶれた軍人でした。
電子戦部隊で鳴らした腕に溺れ、CIAにちょっかいを出したところに偉大なる
軍に興味を持っていたキービィは興味をそそられましたが、情報屋は突然来たマッチョとボンテージの二人組には早く帰ってほしそうでした。
偉大なる
どうやら
情報屋は正直返り討ちにあうだろうとわかっていましたが、キービィはただの
とにかく絵面がキツいですね。
情報屋は嫌になり、デスクの引き出しをあけコカインをキメました。
■
キービィは目の前で
情報屋は少し曖昧な状態になっていたため、マッチョからの酒も気を良くして呷りました。
するとなんということでしょう。
瞳孔は散大し、すべてが眩しく
血流がよくなったのか、無自覚に抱えていた眼精疲労や肩こりもほぐされていきます。
情報屋の目にはキービィはもはや
こころなしか
気づけば
キービィは両親の酒がウケたことに気を良くし、またイザとなれば軍人だからなにか役に立つだろうと連れて行くことにしました。
情報屋はもう一度酒を求め、キービィたちは改めて酒で乾杯することにしました。
情報屋は故郷の言葉で乾杯の音頭を取ります。
「
キービィには聞き慣れませんでしたが、
■
サルはラリっていましたが、もとは
「いくらなんでもナイフと
キービィにももっともに感じられたので、マッチョと変態とジャンキーは武器を揃えに行きました。
ちょうど近くに偉大なる
そこのガンスミスはなかなかイケイケなお姉さんが取り仕切っていましたが、声が低かったので女装子だとキービィにもわかりました。
ルックスと声のアンバランスさ、銃器を紹介するときの距離の近さにキービィはドギマギしましたが、なんとか武器はサルのアドバイスをもらいながら揃えることができました。
キービィの肩を妙に撫で擦る女装子はいいました。
「あなたがたの息、イケない匂いがするわね」
単純に酒臭いといえばいいのに。
暗に自分にも酒を飲ませろ、と言っているように感じたキービィはしぶしぶ酒を分けてやりました。
無駄に
しかしサルの下半身は猛烈に刺激を受けたようです。
よくわからない理屈をならべつつ口説き始めたのです。
あれよあれよと話が進むうち、『キービィの…』『菊の花…』の不穏な言葉が聞こえつつも女装子もカチコミに加わることになったようです。
少し不安な気持ちになったキービィでしたが、人手はあったほうがいいし、色仕掛にひっかかるアホもいるかもしれない、と了承します。
目の前でそのアホもいることですし。
■
いよいよカチコむことにしました。
ナイトクラブの客に交じり近づいてオンラファミリーの
バカみたいに単純で無謀な作戦でしたが、素人のマッチョ、変態、ラリったジャンキー、発情した女装子にはこれしかありません。
それに案外単純なものこそ防ぎにくい気もします。
キービィたちはあっという間に
上手く行きすぎて怖いくらいです。
怖いボディガードもいましたが、幸いにして人間に見えたので、
そうはいってもキービィは色んな意味で
怖くて脚が震えて来ました。
そんなキービィにサルはタバコのようなものを差し出します。
「
キービィはそれに火を点け、煙を肺に取り込んですかさず両親の酒を呷りました。
なんだかよくわからないけれど、途端に元気になりました。
そう、マリファナをキメたのです。
両親の酒はどうやら
大概
■
キービィは
一つの
どうやらオンラファミリーの
無事に首領の生命も
ナイトクラブは
神がかった『なにか』が、キービィをその夜から一流のやり手としたのです。
キービィは偉大なる
■
偉大なる
恨み言を言う輩は、大抵偉大なる
両親はキービィのもとにかえってきました。
少し
カーテンを閉める必要はありましたが、サルの故郷の言葉で
少し後ろ暗いけれど、暖かな日常をとりもどすことができました。
キービィは程なくして父ビッグGの跡を継ぎ、偉大なる首領ブラコのもとでお酒を造って売ることにしました。
さすがのギャングの
時々なにかよくわからないものを運ぶことになるときもありますが、細かなことを追求しないのが長生きのコツだと、キービィはわきまえています。
あの三人も、後ろ暗いながらも変わらず日常を過ごしているとキービィは耳にしています。
今日もキービィたちの桃園には暖かな
めでたしめでたし。
〈完〉
ギャングスタ桃太郎 リタ・ワーサー @foolstyle_7
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