【短編】天賦の才を継ぐ者
仁藤欣太郎
早苗は都内の私大に通うごく普通の大学一回生。彼女は四月に入ったばかりの軽音楽サークルの先輩、山中玲子に憧れていた。
きっかけは入学したてのころ、軽音サークルが勧誘の一貫として開いたミニライブだった。ステージ上でエレキギターを手に流麗なフレーズを軽々と弾きこなす玲子を見て、早苗は一瞬で彼女の虜になった。
玲子は細身でスタイルが良く、整った顔立ちと艶のある長い髪が目を引く、大人びた雰囲気の四回生だ。身なりもオシャレで、いわゆるバンギャルというより、モデルでもやっていそうな綺麗めの女子大生だった。
玲子のギターサウンドは
早苗はサークルに入った当初から玲子になつき、玲子もまた、自分を慕う早苗のことを妹のようにかわいがった。
六月某日。昼前の枠に講義が入っていなかったので、早苗はひと足早く学食へ行くことにした。大好物のバナナオレを片手に学食に入ると、そこには窓際で一人佇む玲子の姿があった。彼女は何の変哲もないコンビニのカフェラテを飲みながら、いつものように上機嫌で音楽を聴いていた。
「玲子センパーイ!」
早苗が呼ぶと玲子はそれに気付いて振り返り、イヤホンを外した。
「さなちゃん、お疲れー。二限なかったの?」
「はい。玲子先輩も?」
「うん、今日は休講。ここ、座って」
玲子は隣の椅子を引いた。
「失礼します」
早苗はその椅子に腰掛けた。
「先輩はもう就職先決まったんですか?」
「うん。
「四菱商事って大手商社じゃないですか! すごーい!」
常にオーバーリアクションな早苗に持ち上げられ、玲子はこそばゆそうに笑った。
「そんな、ラッキーだよー。周りの人達、東大京大一橋とか、そんな人たちばっかだったし。たまたまうちのバンドのライブに来てた人がいてさ、その人がいい流れを作ってくれたから上手く喋れたの」
「そうなんですねー。でも凄いですよ! さすが玲子先輩!」
「やめてよー、恥ずかしい」
玲子は笑いながら早苗の肩を軽く叩いた。
「さなちゃんは最近どう? 大学は慣れた?」
自分の話ばかりするのもなんなので、彼女は先輩らしく早苗に近況を尋ねた。
「はい、お陰様で。友達も増えたし、軽音サークルに興味ある子とも仲良くなって。今度連れてきますね」
「ありがとー。その子、楽器は何?」
「サックス吹けるみたいです。アルトとバリトン? って言ってました。高校まで吹奏楽やってたとかで」
「へー、珍しいね。木管なのにジャズ研じゃなくて軽音なんだ」
「よくわかんないですけど。でもベースに興味があって、これから始めたいって言ってました」
「そうなんだ。さなちゃんもギター始めたばかりだし、一緒にバンドやるといいかもね」
同じ軽音サークルの先輩後輩にあたる二人の会話は、専らバンドや音楽の話だった。二人は変な教授の話や最新のコスメの話と同じかそれ以上に、日常的に、自然とそういう話をした。
「ところで先輩。今何聴いてたんですか?」
その中でも特に多い話題が「何を聴いているか」だった。早苗は憧れの玲子先輩がどんな音楽に影響を受けたのか興味津々だった。気前の良い玲子は、彼女に尋ねられるといつも喜んで教えていた。
「今聴いてたのはねー、エリック・ジョンソン。さなちゃんエリック・ジョンソンは聴いたことある?」
「ないです」
「じゃあちょっと聴いてみる?」
「はい! 聴きたいです!」
「じゃあ、はい」
早苗は玲子に渡されたイヤホンを耳にはめた。準備が整うと、玲子は音楽アプリの再生ボタンをタップした。曲はエリック・ジョンソンのマンハッタン。強めのリバーヴがかかったフェンダー・ストラトキャスターの煌びやかな音色が、すっと早苗の鼓膜に溶け込んだ。
エリック・ジョンソンのサウンドは、クリーンは透明感があり、歪ませるとまるでヴァイオリンのように美しく、どこか玲子のプレイと似ているところがあった。
「凄い! ギターだけでこんなにいろんな音が出せるんですね!」
曲が終わると早苗は大はしゃぎで玲子の方を見た。エリック・ジョンソンの七色の音色とでも言うべき多彩なプレイに、彼女はすっかり惚れ込んでいた。
「こだわりが強めな人だからね。凄く綺麗な音で弾くでしょ?」
「はい。なんとなく玲子先輩の音も似てますよね」
「うん。けっこう参考にしてるから」
「他にはどんなの聴いてるんですか? 先輩の聴いてる曲、もっと聴きたいです!」
早苗は素直で遠慮のない子だ。彼女のそういう明け透けなところを玲子も好いていた。
「じゃあ……これなんてどう? マンハッタン繋がりで、マンハッタン・トランスファーのトワイライト・ゾーン」
玲子は次の曲を選び、再生ボタンをタップした。
「これ、結構昔の曲ですか?」
曲が始まると早苗はまずそう尋ねた。曲調と音質が少し古く感じられたからだ。
「うん。たしか一九八〇年ぐらいかな。あ、この曲ギターソロがカッコいいから、ソロの前まで飛ばすね。弾いてるのはジェイ・グレイドン」
「はい」
ギターソロが始まると早苗の目の色が変わった。ジェイ・グレイドンのソロは個性的でクセが強く、それでいて細部までしっかりと構築されていた。目を見張るようなギターソロが、このノリの良い曲の勢いをさらに上へと引き上げていた。
「凄い凄い!」
ソロが終わると彼女は両手をぎゅっと組んで、興奮気味に玲子の方を見た。
「こんなカッコいいギターソロ聴いたことないです! あと、その……。なんていうかこの人の音、すっごく男前!」
「わかるー! なんかさー、雰囲気が昔のイケメンって感じだよね。フレーズはクセ強めなのに音は真っ直ぐでさ」
「ですです。あたし、玲子先輩のおすすめ、もっと聴きたい! どれもすっごくカッコいいし」
凄いが口癖の早苗は、玲子の前では普段の倍ぐらい凄いを連呼した。自分の好きな曲を凄い、カッコいいと言われた玲子も気分が良いのか、だんだん乗り気になってきた。
「いいよ。じゃあねー。次はこれ。ラッシュのミッションっていう曲。ギターはアレックス・ライフソンね」
それから小一時間、早苗は玲子が影響を受けた音楽を次々に聴いていった。
Steely Dan - Kid Charlemagne
Toto - Rosana
Hiram Bullock - Way Kool
Joe Satriani - Memories
Martin Barre - Spanner
Robben Ford - Help The Poor
大村憲司 - Left-Handed Woman ("Kenji Shock" version)
George Benson - This Masquerade
Pat Metheny Group - Have You Heard
……
玲子の選曲は熱心なギタリストなら誰もが知る名曲から、知る人ぞ知る佳曲まで幅広く織り交ぜたものだった。ジャンルはロックからジャズ・フュージョンが多く、テクニカルな曲でも一貫してメロディの際立つ曲が多かった。その辺りが玲子の個性の源なのかもしれない。
十曲ほど聴いたところで二人は一息つくことにした。学食に併設されたコンビニで小菓子と追加のドリンクを買って戻る二人。でも結局、する話といえばまず音楽の話だ。
「玲子先輩ってほんと、音楽のこと、ギターのこと詳しいですよね」
「そんなことないよー」
「えー。だって女子でこんなに詳しい人っていないですもん。なんていうか、音楽オタクっぽい男の人みたい。あ、玲子先輩が音楽オタクの男みたいって言ってるんじゃなくて……。もちろん玲子先輩は綺麗で、スタイル良くて、素敵で……」
「こらこら。恥ずかしいからやめなさいって」
玲子はそう言ってまた早苗の肩を軽く小突いた。
「でもいいとこ突いてる。実は今日さなちゃんにおすすめした曲ね、全部わたしの憧れの人に教えてもらったの。その人ものすごく詳しくてさ」
そう話しながら玲子は元いた椅子に座った。早苗も席に着いた。
「先輩の憧れの人? 会ってみたいです! 先輩が憧れるんだから、きっとめちゃくちゃ上手い人ですよね?」
「うん。わたしは世界で一番上手いと思ってる。・・・・・・でも残念だけど会えないの」
玲子はちょっと寂しそうに窓の外、遠くの方をぼんやりと眺めた。
「え? なんでですか?」
「……死んじゃったの。拒食症で。餓死」
「え……」
玲子は少し俯いて、いっそう寂しげな顔をした。予想だにしない答えに早苗は言葉を失った。かける言葉も浮かばず、ただ玲子の次の言葉を待つしかなかった。そして少し間を置いて、沈黙を埋めるように玲子は話し始めた。
「ストレスで過食症になって、それから食べたものを吐くようになって、今度は逆に拒食症になって……」
「そうだったんですね……」
玲子は誰かに話す機会を求めていたのかもしれない。短い付き合いだが自分を誰よりも慕ってくれる早苗なら、あるいは……。無意識にそう感じていたのかもしれない。思わせぶりな言い方になっている自覚はあった。しかし早苗なら受け入れてくれるという信頼感もあった。彼女は思い切って憧れの人の記憶について語りだした。
「彼を初めて見たのは高校二年の夏。彼は大学三年生。うちの軽音サークルの先輩だよ。学年は入れ違いだったけど」
「そうなんですね」
「友達が追っかけてたバンドのライブに誘われてさ。彼は対バンで出てたバンドのギタリストで、その友達は全然興味ないみたいだったけど、わたしは彼の音を聞いた瞬間、胸がドキドキして止まらなくなった」
相当な衝撃だったのだろう。そのときのことを語る玲子は、一時的に寂しさが薄れたのか目が輝いていた。
「その日出演したバンドのギタリストはみんな上手かったけど、彼だけ場違いなオーラが出てたの。彼のギターは一音一音が脳に直接響いてくるような感じで、何かが根本的に違ってた。わたし、気付いたら泣いててさ。何泣いてんのって友達にツッこまれちゃった」
照れ笑いをしながら、玲子は嬉しそうにその日の出来事を語った。その様子は普段の綺麗で大人びていて、どこかスタイリッシュな雰囲気を醸し出す玲子とは少し違っていた。早苗はなんとなく鏡を見ているような気分になった。玲子先輩も憧れの人の話になるとこういう顔をするんだと、これまでとは別の意味の親近感すら感じていた。
「でね、居ても立っても居られなくなって、その友達と一緒に打ち上げに混ぜてもらったの。それでタイミングを見計らって彼に近付いて、感動しましたって伝えたら『それはどうも』って。ステージで見せた緊迫感が全然無くて、なんか凄く人見知りっぽくてさ。ちょっと変わった人だった」
変わった人だったと言いながら玲子はまんざらでもない感じだった。それだけ彼と関わった時間は良い思い出なのだろう。たとえそれが悲劇的な結末を迎えたとしても。
「ライブの次の日、バイトで貯めたお金でギターを買って、それからは毎日練習。ピンキー・アンド・ダイアンのバッグとワンピが欲しくてバイト始めたんだけど、なんかどうでもよくなっちゃった。それからは彼の追っかけ。ライブの打ち上げのたび、いつも何を聴いてるのか聞いて。ちょうど今のさなちゃんみたいに。彼、口下手なのに音楽の話になるとすっごく饒舌でさ、喋りだしたら止まらないの。わたしはそれをメモして、帰ったらすぐに曲をダウンロードして耳コピして。その繰り返し」
そういう日々の積み重ねが今の玲子のプレイの基礎となったのは言うまでもない。彼の存在があったおかげで、彼女はギターを始めたその日から最高の状態で練習に励むことができた。もちろん彼女自身、そのことに心から感謝していた。
「高三になったら受験勉強で練習量は減ったけど、入れ違いだけど彼と同じ大学に入ろうって決めてたから前向きに頑張れた。それでこうして志望校に入学して、軽音サークルに入って。先輩に彼のことを聞いたら、わたしが受験で追えてなかった間にデビューのオファーが来てたみたい」
「凄いじゃないですか」
「うん。わたしも自分のことみたいに嬉しかった。そのすぐ後にリリース情報が出て、ちょうど今ぐらいの時期にデビューして。もちろんダウンロードでも物理でも買って、彼のアマチュア時代の音源と一緒に毎日聴いてた。……ただ正直、プロとしての彼の音は何かが違う気がしたの」
玲子はまた寂しそうな顔で視線を落とした。音は演奏者の状態を言葉以上に物語ることがある。感覚的な話ではあるが、プロになってからの彼の音が、彼女にはそれまでとは根本的に違うものに聴こえたらしい。
「違うって、何がですか?」
「なんか無理してるなって。レコード会社の売り出し方と彼の個性が上手くかみ合ってない感じでさ。フレージングは彼そのものだったけど、あの命を削って弾いてるような緊迫感がほとんど感じられなかった。そのせいかどうかはわからないけど全然売れなくて、わたしが二年に上がった年の冬に契約終了でバンドは解散。メンバーはスタジオミュージシャンになったり、プロの道を諦めたりいろいろ。彼はそのままプロとしてやって行こうとしたらしいんだけど……」
「ってことは、上手く行かなくて……」
「うん。彼、ちょっと気難しくてさ、他人と上手くコミュニケーションがとれないところがあって……。音楽業界って腕はもちろんだけど、プロデューサーとか偉い人と上手く付き合えるかどうかも大事みたいでさ、彼はそこがだめだったみたい。音楽の仕事が続かなくなってからは生活も荒んで、あとはさっき言った通り……」
「……」
現実は厳しい。才能があるからといって上手く行くわけではない。特に人の繋がりが大きなウェイトを占める芸能、音楽業界では、力のある人の心証を害さず上手くやっていく能力も要求される。それが彼には決定的に足りなかった。
「わたしは軽音サークルのつてで葬儀にも参列させてもらって……。一番辛いのは家族なんだって思って堪えてたけど、痩せ細って別人になった彼を見て、わたし……」
するとそこで玲子は突然泣き出してしまった。そのときのことを鮮明に思い出し、堪え切れずに涙があふれたのだろう。泣いているのを他人に見られないよう、彼女は咄嗟に顔を隠すように俯いた。
「せ、先輩! 大丈夫ですか?」
早苗は憧れの玲子先輩が泣き出したのがショックで、どうしたらいいかわからずおろおろしだした。玲子の昂った感情が落ち着くまで、彼女は背中をさすって慰めるぐらいしかできなかった。
「ごめんね。いろいろ、思い出しちゃって……」
思わせぶりに泣いているのではなく、玲子は本当に辛く、苦しく、耐え難い想いで、涙を止めようにも止めることができなかった。
「わたし、あんなに彼に近づいて、いろいろ教えてもらって……。なのに……、それなのに……。苦しんでる彼に、何もしてあげられなかった……。わたしがさ、あの人の彼女になって、そばで支えてあげることだって、できたかもしれないのにさ。馬鹿だよね……」
男の死は明らかに玲子の責任ではない。しかし憧れの人が破滅していく中、ただ指をくわえて見ているしかなかったこと、それに今にしてみれば救う手立てがあったのかもしれないという後悔が、彼女を自責に走らせた。
「……玲子先輩のせいなんかじゃないですよ。その人がプロになってからは会おうと思っても会えなかっただろうし、荒れてたときは、そんなの、他人がどうこうできる話じゃないじゃないですか」
早苗の言う通りだった。しかし玲子は過去を振り返って悲しみに暮れるばかり。見かねた早苗は居てもたっても居られず、いつになく真剣な顔で彼女に意見した。
「……先輩がその人の先へ行けばいいと思います!」
「え?」
「先輩は生きてるんだし、その人に憧れたんだから、追いついて先に行かなきゃダメですよ!」
「さなちゃん……」
「あたしの憧れは玲子先輩なんです! 先輩にはずっとあたしの憧れでいてほしいんです! だから……、だから……」
早苗が玲子に意見するなど初めてのことだった。彼女はまるで親を慕う子のように玲子になついていたし、普段から玲子の一挙手一投足に従っていた。それが、「彼」に憧れる玲子をより身近に感じたからなのか、つい気持ちが言葉となって出てしまった。
「……」
「あ! ……ごめんなさい。生意気言って」
早苗はぽかんとする玲子を見てはっと気が付いた。こんなに強くものを言うなんて信じられないと、彼女自身、自分の行動に驚いていた。しかしそれが玲子の心に深く響いた。玲子は涙を拭い、いつもの優しい微笑みを返した。
「ううん。さなちゃん、ありがとう。そうだよね。そうやって、憧れて、追いかけて。その先に自分の道があるんだよね」
「先輩……」
彼女を縛る呪いが解け、密やかな決意が心に宿った。ごくありふれた初夏の昼下がり。何気ない会話の中で、次代を担う才能の芽吹く音がした……。
……
その後玲子は大学を卒業し、大手商社に勤めながらバンド活動を続けた。二十五歳でメジャーレーベルからアプローチを受けた彼女は会社を辞め、音楽活動に専念することにした。レコード会社の意向でソロアーティストとして売り出すことになったが、彼女の才能を本人以上に理解していたバンドメンバーは、僻むこともなく素直に祝福した。
玲子はデビューするとすぐ、歌も歌える凄腕の美人ギタリストとして、まず熱心な音楽ファンの注目を浴びた。ほどなくして彼女の曲が人気国産RPGシリーズの最新作の主題歌に採用されると、その素直な歌声と、技巧的でありながらキャッチーでメロディアスなギターが幅広い層にうけ、ダウンロードを中心にスマッシュヒットとなった。
それをきっかけに、玲子が最も影響を受けた無名のギタリストの名も、彼女が大切に保管しておいた音源とともに世に知れ渡った。彼女の所属するレーベルから男の生前の作品がリリースされると、ギター専門誌は「悲運の天才ギタリスト」と銘打ち、こぞって特集を組んだ。それから彼のプレイは多くのギタリストにコピーされるところとなった。
そしてその一年後。
「山中さん。この度はアメリカの気鋭の新人、ジョセフィーナのレコーディング、お疲れ様でした。まずは世界の舞台に立てましたこと、本当におめでとうございます」
「ありがとうございます。世界のトップクラスのアーティスト、プロデューサー、エンジニアの方々とご一緒させていただき、お陰様で大変勉強になりました」
「今回のレコーディングは錚々たる面々でしたからね。……そのあたりの話は後ほど詳しくお伺いするとして、先に今の心境をお伺いしてもよろしいでしょうか。海外でも高い評価を得て、ジョセフィーナのワールドツアーも大盛況。この後のジャパン・ツアーもチケットは完売。この成果をまず誰に伝えましたか? もしくは誰に伝えたいですか? やはり
「そういう気持ちはあります。わたしはずっと彼を目標にギターをプレイしてきましたから。ただ彼が生前言っていたんです。『結局最後は
「成長したご自身の出音で彼に伝えたいと」
「はい、そうです」
「素晴らしいと思います。ではその先はどうですか? 漠然とした質問にはなりますが」
「今回のレコーディングとワールド・ツアーで、わたしが今までに受けた影響が自分の中で一つの完成形になった感じがしてるんです。だから、今までも自分の音楽性を追求してきましたけど、ミュージシャンとして、ここからが本当の自分の道なんじゃないかと思ってます」
「どこまで行けるか、さらなる挑戦の道ですね」
「はい。たくさんの素敵な先輩方の影響を受けた、わたしの挑戦です」
「あなたの挑戦に、あなたのファンも、私たちモダン・ギター・マガジン編集部も大変期待しております」
「ありがとうございます」
玲子の挑戦はまだ始まったばかりだ。
【短編】天賦の才を継ぐ者 仁藤欣太郎 @KintaM
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