第13話 最高神、いや邪神
『アルヴァ・グレイブラッドは仲間であるクロノ・ナイトレイを冷遇し過ぎでは?これでは虐待ではないですか……』
『ふっふっふ、それはねエレナ君。クロノ・ナイトレイは美少女奴隷なんだよ。
千年前の男性向け大衆娯楽小説では女美少女奴隷を主人公が侍らすことが流行っていたのさ!』
『……そんな野蛮な思想を彼は持っているのでしょうか?通り魔から人々を守るほど勇敢な人間なのに?』
『それとこれとは別さ!道徳は道徳、欲望は欲望だよ!彼は拗らせオタクという奴だね!』
『ですがこの少女は虐待して鬱憤を晴らす為の奴隷としては能力が強力過ぎるのでは?』
『うん、それは強い女を隷属させたいという欲求だろうね!』
『しかし結果としてアルヴァは没落し若くして悲惨な死を迎えるようですが。……彼は本当に主人公なのでしょうか?』
『屈辱の果ての死は闇落ちする理由だね!アルヴァは魔神に魂を売り魔王になるんだ!そして人間たちを支配するのさ!』
『英雄が魔王に……?』
『そう、そして勇者となったクロノと戦い彼女を再び自分の奴隷に堕とすのさ。成長し強くなったと思ったのに暴君に敗北し強制奉仕させられる女勇者タン、プライドボッキボキ!!ハァ……たまんないね~!!』
『……そんなおぞましい魔王が好き放題する為の世界を私たちは見守らなければいけないのですか?』
『そうだよ、楽しみだよね~!!』
これが俺が今居る世界が創生される前の会話らしい。
タチの悪いオタクの見本のような人物はエレナの上司であり、なんとこの世界を統括する最高神だというのだ。
人を勝手に魔王にするな、この邪神。そう当人が眼前に居たら怒鳴っていたかもしれない。
それ位の資格はある筈だ。俺の書いた小説が消失し、完璧な再現が出来なかったとはいえ捏造が過ぎる。
「アルヴァが魔王になるとか、クロノを敗北堕ちさせるとか……全部この人の性癖で妄想じゃないか!」
俺が拗らせてるのでなく、この最高神とやらが拗らせてるのだ。
成程、初めて会った時のエレナの眼差しが鋭かったのはこれが理由か。
俺は美少女を奴隷にする趣味があると思われていたのか。誹謗中傷で訴えたくなる。
「結局部下である私はあの人を説得することは叶いませんでした……」
申し訳ありません。そうしょんぼりと言いながらエレナは俺の前に大量の本を出現させた。
鎖と首輪が服代わりですといった美少女がメインの表紙と、内容が一目でわかる親切な長文タイトル。
正直興味はある。しかし女性の前で、いや人前で読むのは躊躇われる類の作品だ。
というか、ラノベどころか普通に成人向けゲームのパッケージも混ざっているのだが。
「反論したいならこの参考文献を全部読破し感想文を提出してからにしろと言われてしまい……私は、心が折れてしまったのです!」
「もうその人、いやその神パワハラとセクハラで訴えていいよ!俺も手伝うから!!」
知の女神の嗚咽と俺の叫びが二人きりの神殿に木霊した。
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