マイ アビリティ。
美咲☆@
プロローグ
荒廃した大地が唸りを上げ、太陽は何処かに隠れてしまった。
……私はまた、間違えたんだ。
何処と無く虚しい様な、悲しい様な、憎たらしい様な、そんな感情が私の中で代わる代わる駆け回る。
「アレ」が生まれて来なければこうなる事も無かった。
みんなみんな、アレを恐れ嫌った。
だから私もそうだって信じた。
実際隣に居るだけで寒気がしていた。
アレから向けられる感情全てを体が拒絶した。
だから、何も無いうちに離れる事を望んでいた。
……なのに、全て思い通りにならなかった。
またしても。
もうこの世界に、人生に未練なんて無い。
さっさと消えちゃおう。
私はポケットに運良く入っていた果物ナイフを手繰り寄せた。
ポケットから引き上げられたそれはまるで、最後の輝きを実現するかの如く暗闇に包まれ光さえ届かないこの場所でただ一つ光り輝いていた。
「今度は首にしよう。」
周りの耳が痛くなるような静寂をどうにかしたかったのか、いつの間にか私は思考を音にしていた。
何度やっても慣れないこの空気が、ようやく私に終わりを伝えてくれている。
そう信じて真っ暗な宙を睨みつける。
首の辺りに冷たく鋭い感触が伝わってくる。
確か人間は中心が大事だったっけ。
納得のいく場所までその冷たい感触を連れて来る。
私の意識はすでにそこにあった。
意識を断ち切るように、全てを乗せるように、私は今度こそ本当に本当に覚悟を決めて
思い切りナイフを滑らせた。
ー嗅ぎ覚えのある線香の香り。
古臭い天井が、やけに私を見下して見える。
「あぁ、また戻って来ちゃったんだ。」
マイ アビリティ。 美咲☆@ @Saki0602
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