怪異転醒
マインドフルネスERA
プロローグ
ーー
敵である魔王軍は非常に高い生命力・魔力をもつ魔物を引き連れ、次々と村々を焼き尽くし、人類は疲弊していた。
そこで、人類の国々をまとめていた大帝国であるディスピカボーはとある禁術を解禁。
それは全人類を救うべく、能力の高い異世界者を召喚し、この戦争の要とする禁術であった。
◇◇◇
「陛下、このままでは……人類は魔王軍に滅ぼされてしまいます!」
帝王の足元まで駆け寄った部下が口早に叫んだ。その声は玉座の間に大きく響いた。
「魔王軍は次々に我が領土を焼き尽くし、騎士たちは疲弊しています! 敗戦が続き、民からは不満の声が上がってきています!」
部下は戦況化を述べる。ディスピカボー帝国は一刻を争う状況下に陥ってしまっていた。
「まじやべーよな。うん……どないしようかのぅ」
戦争下にもかかわらず、ディスピカボー帝国の帝王はかなりてきとうだった。玉座に腰掛けてはいるが羊の皮でできたシャツと短パンしか着ていなかった。長く白い髭と頭髪はボサボサで側から見たら帝王だとは思わないだろう。
「……失礼ながら陛下、ここはあの禁術を発動するべきかと……」
部下は俯きながら冷静に帝王に提案を試みる。
「えぇ〜あれって術者たちにめっちゃ金やらんと出来んやつやろ? 嫌じゃあのぅ〜あんな奴らに金出すとかぁ、顔もなんか陰湿じゃし……」
ティスピカボーの帝王はケチだった。
帝王の踏ん切りがつかない様子に部下は少し焦り、口を開く。
「失礼ながら陛下。このままでは陛下の大好きな朝食のくるみパンが……無くなってしまいますよ?」
部下は帝王の好きなものをなんでも知っていた。それで釣れると思っているのだ。
「え〜ま? それかなりやばいやん。これ禁術使ったろ」
帝王は特に何も考えず、部下の口車に乗ってしまう。
帝王はやはり、てきとうだった。
そこで部下は懐から古びて小汚い巻物を懐から出した。
「この巻物によりますと禁術ではある程度、召喚する者の能力を指定することができるそうです」
部下は術式が書かれた巻物を眺めながら帝王に説明して、帝王へ渡した。
「うわぁ〜この巻物ちょっと埃っぽいしなんか洗っていない駄犬の臭がしてきついのぅ」
帝王は怪訝そうな表情になる。意外と潔癖なのである。
「えーっとなになに? ってこれ、古代語でなんも読めんわい!」
小汚い巻物を部下へと放り投げる。放り投げた勢いでページの端が千切れてしまう。
「陛下、ではどのような者を召喚しましょうか? やはり魔王軍を潰せるだけの人材をお望みでしょうか?」
部下は千切れたページを慌てて拾いながら帝王に聞く。
「うーんそうじゃのう……異世界の特異能力のある、まじバケモンみたいな奴召喚しといてほしいかのぅ」
帝王は鼻をほじりながら部下に伝える。深くは考えていないのだ。
「……特異な能力ですか? 例えばどのような?」
部下は紙を取り出し、メモを取ろうとする。真面目かもしれないのだ。
「せやのぅ。まず城を長年に渡って守った屈強で図太い精神を持つ兵士がええのぅ」
帝王はマッスルポーズをとりながら部下に話伝える。
しかし部下はメモを取ってポージングを見ていなかった。
「城を長くに渡り守り続けた者ですね? かしこまりました! まずはそのような強者の召喚を試みます!」
部下は帝王の扱いに慣れているのだ。
「それじゃあえーと、禁術召喚……始めぃ!」
帝王の号令とともに、術者たちに大金が配られ、禁術が発動する運びとなった。
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