二人に出会えてよかった
「この金、全部貰っていいんですか?」
「はい、ゴブリンの群れ討伐の報酬ですので」
「おぉ……すげぇ」
ゴブリンの群れ討伐の報酬として冒険者ギルド受付の人から渡された大量の金貨が入った袋を渡された俺は思わずそんな声を上げた。
手にずっしりと感じる重み。
眩しいぐらいに輝いている金色のメダル。
その光景全てが俺とリリアを称えてくれているような気がしてとても嬉しかった。
俺が感傷に浸りながら袋を眺めていると、受付の女の人が少し興奮気味に言い寄ってきた。
「それにしても凄いですね、転生者の方とはいえ初めての討伐依頼でAランク相当の依頼をやってのけるなんて、しかも無傷で」
「え?」
「昔は特別な能力があるからって背伸びしてAランク相当の依頼を受けて大けがを負った異世界人の方が大勢いらっしゃいましたからね……ちょっとした社会問題にもなりましたし」
「あ、あの~それ冗談とかですよね、嫌だな~」
「いえ、本当ですよ? だから初めて討伐依頼を受ける異世界人の方は必ずAランク以上の冒険者か『英雄円卓』の方と一緒に依頼を受けなければならない決まりになっています」
「…………」
俺は固まった表情のまま、隣に立っているリリアを見る。
そう、さっき話題にでていた『英雄円卓』の一人である彼女の顔を。
リリアは不思議そうな顔をして首を傾げた。
「あれ?僕そのこと言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ!!」
俺はそう言いながらリリアの両肩を掴んで勢いよく彼女の身体を揺らす。
「やっぱりゴブリンの群れの討伐依頼なんて初心者に対してハードルの高いものじゃねーか!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて、僕言ったでしょ、『君と僕がそろえばゴブリンの群れなんてあっという間さ』って、実際その通りだったじゃん」
「確かに言ってたけど!!」
俺は涙目になりながら必死に抗議する。
そうだとしても、それでも、普通はもっと難易度の低い依頼を受ける物だと思うんだけど
「僕はケイに自信を持ってもらいたかったんだよ、僕と一緒に戦ってこんな好成績を残せるのは紛れもない君だけだってことを知ってもらいたかったのさ」
リリアは満面の笑みで俺にそう言った。
「まぁ……確かにぃ、俺達二人そろえば負けなしだからな」
リリアの言葉を聞いて納得してしまった自分がいる。
だって仕方がないじゃん、彼女の笑顔は今まで俺の不安を取り除いてくれたし、今までの戦闘だって彼女といれば負けなしだしー
「いやいやいや、俺達がクエストに失敗する可能性だって十分にー」
「それについても大丈夫さ」
リリアはそう言って冒険者ギルトにある柱の方を指さす。
そこには、まるでストーカーのようにこちらを見つめているミミさんがいた。
「僕たちが朝家を出てからミミが後をつけてるのは分かってたから、もしもの時は彼女に助けてもらう予定だった」
「何やってるんだあの人」
メイドさんが自分の使えるお嬢さまのストーカーとかしてもいいんだろうか?
そんなことを思っていると、ミミさんはこっちまで移動してくる。
「おや、お嬢さまにケイ様。奇遇ですね」
ミミさんはストーカーしてることがばれていないと思っているのか、そんなことを言いながらこちらに歩いてくる。
「お二人ともクエストでお疲れの様なのでこれを、疲労が一気にとれる薬です」
そう言って彼女が取り出したのは青い液体の入った小瓶だった。
渡された小瓶を一口飲むと、確かに体が軽くなったような気がする。
「ミミは気が利くね、僕の自慢のメイドだよ」
「ふふ、お嬢さまにそんなに褒められるなんて、今日は記念日でー」
「僕をストーカーする癖さえ何とかしてくれればなぁ」
「……」
ミミさん、思いっきり目そらしてるし……
「あ、そうです。ケイ様の初めての討伐依頼のお祝いとしてどこかお店にでも行きましょう!」
「話そらしてるし!」
俺とリリアは口をそろえてミミさんにそんなツッコミを入れる。
思わず同じことを言ってしまったのが少しおかしくて、俺たち三人は顔を合わせて笑いあった。
色々あったけど、今日はなんだかんだ楽しかったな……この異世界に着て、リリアとミミさんに出会えてよかった。
「そうだ、せっかくだから3人で食べにー」
俺がそう言いかけた瞬間、冒険者ギルド全体を襲うように強力な衝撃波が走った。
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