異世界で出会った女冒険者との相性が最強だったのでコンビを組んで同棲してみた件
アカアオ
プロローグ 最強コンビの日常
「え?」
俺がそんな間抜けな声を出したときにはもう遅かった。
耳元でうるさく鳴り響くクラクションの音。
視界に映る青く光る歩行者用の信号と赤い自分の血。
ほんのちょっとの不幸。
そんなちょっとしたことで俺の命は儚く散っていった。
「まったく……なーにが『読んだだけで幸福になれる本』だよ、このペテン師め」
俺はそう言いながら手に持っていた愛読書を大事そうに握りしめ……そして死んだ。
◇◇◇
「随分懐かしい夢を見たな」
俺はそう言いながらベッドで横になっていた体を起こす。
カーテンの隙間から差し込む朝日が心地よい。
にしても本当に懐かしい過去を夢に見たものだ。
そう、俺はもともと住んでいた日本で1度死んでー
「ユガルタという名前の異世界に迷いこんだ。今巷ではやっている異世界転生というやつだ」
俺の回想に合わせるように部屋に響き渡る一つの声。
いや~な予感を抱きながらも俺は声のした方向を向く。
そこには俺の日記帳を楽しそうに読んでいる高身長黒髪ロングの女が立っていた。
「あっ、ケイ起きたんだ。おはよー」
「あっじゃねーよ!リリア、お前何勝手に俺の日記読んでるんだよ」
「ケイが無防備にも机の上に日記を置くのが悪い。大方僕が日本語読めないからって油断してここにポイッと置いてたんじゃないの?」
リリアはビシッと指を立てて自信満々にそう言った。
正直なことを言うと図星である。
ん?でもリリアはユガルタ特有の文字しか読めないはずなんだが……さっき思いっきり俺が日本語で書いてある日記読んでたよな……なんで??
「もしかして……日本語読めないってのはウソ?」
「僕は嘘はつかない主義だよ、僕が日本語が読めないっていうのは本当のこと」
彼女はそう言うとポケットからビー玉みたいなガラス球をとりだす。
そして、小悪魔みたいに笑いながらガラス球を見つめている。
「まぁケイの日記を読む方法がないとは一言も言ってなかったけど」
彼女はそう言って俺のことを見つめてニッコリと笑った。
きっとあのガラス玉に日本語を読める魔法かなんかが付与されているんだろう。
うん、確かに嘘はついてないな嘘は。
リリアは俺の日記をぱっと閉じて机に戻すと、急に俺の身体に抱きついてきた。
「ど、どうしたんだよ急に」
「ペテン師ってどういう意味の単語なの?」
「簡単に言えばお前みたいな人だよ」
「なるほど、大切な存在って意味か」
「なんでそうなる」
俺があきれてそう言うと、彼女はベッドの近くに置いてあった俺の愛読書、『読んだだけで幸福になれる本』を手に取って弾んだ声で言った。
「だってケイは僕のこともこの本のことも大好きでしょ」
彼女は満面の笑顔で俺を見つめていた。
そんな顔でそんなストレートなこと言われたら照れる。
俺は彼女から愛読書をひょいと取って照れ隠しと言わんばかりの大声で言い返す。
「俺にとって大切な存在が皆うさんくさいペテン師みたいな奴ばっかりなだけだ!!」
「はいはい、それじゃあ早くギルドに行って討伐依頼をこなしていこうか、皆に僕たち二人は最強だってこと見せつけてやらないとね~」
彼女はそう言って、ギルドに行く準備を始める。
これが異世界に来てからの俺の日常だ。
これは使えない異世界人と呼ばれた俺と落ちこぼれと呼ばれていた彼女の二人でコンビを組み、やがて世界最強の二人と呼ばれるまでの物語。
その物語が始まったのはリリアと出会ったあの日からだった。
◇◇◇◇
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