うちの父さんは、チートでハーレム作った勇者です。
黄昏(たそがれ)
第1話 ようこそ、J&R道具屋へ!
アンドラス王国首都、ラベリャ。
商業区画の一角にある道具屋
「タロート、大きい方のバスケット二つ取ってきてー」
「こっちの?」
「そう、その棚の上のやつー」
「はーい」
母に呼ばれた少年は若干身長が足りなくて、足指で立て、背を伸ばす。
「取った!」
「タロート、運ぶの手伝ってきぃ、荷車は来たわぃ」
カウンターの裏から年季の入ったが、力強い声が響く。
「はーい、今行く」
バスケットを母に手渡して、裏の門をくぐる。
そこには一頭のロバと、その後ろに箱や麻袋積んでる荷車が停まっている。
「爺さん」
少年は、荷車の後ろに立ってる男に声掛けた。
「鍋や碗はあっち、大豆と穀物は倉庫の裏」
爺さんと呼ばれる壮年の男性は、紙束と積み荷と睨めっこしながら、
少年に指示を飛ばす。
「はい!」
「あと小物はカウンターの下に置いてけ」
「わかりました!」
返事しながら、少年は荷物を運び始めた。
「よ、っと」
私、タロートは、このJ&R(ジュード&ローナ)道具屋の長男です。
祖父たちが起業されたこの道具屋は、昔魔王軍との戦争時代では、
たくさんの冒険者がいて、それはもう大に繁盛なされたと聞く。
いまは城下町の生活用品を主に扱う雑貨屋のようになってますが、
祖父たちや母さんの頑張りで、生計を立ててる。
倉庫の荷運びが終わり、店頭のカウンターで小物を仕分け始める。
「ありがとうございましたー!」
隣の母は元気と優しさを感じるの声で、顧客を送り出した。
「お疲れ様ータロート、手伝うか?」
「いいえ、大丈夫です、こっちのが最後ですので。」
「ふふ、さすが我が息子、えらいわー」
仕分けが終わり、立てや否や、母は軽く頭を撫でて来た。
若干恥ずかしさを覚えるが、大人しく撫でて貰えた。
「う…」
カウンターの後ろのドアが開けられて
「お母さん」
「ロアー!お帰りー!」
背が小っちゃい女の子が家側のドアから走ってきて
「ぎゅ~」
「ふふ、ぎゅ~」
カウンターの横でブロンド髪の二人が抱き合う
背の高さを合わせてしゃがんでた母は姿勢を直して
「家に帰ってきた時は~?」
「ただいまー」
「ふふ、いい子ね」
「むふー」
気持ちよさそうに頭を撫でられてるこの可愛い女の子は、私の妹のロロア。
愛称ロア。
「お兄ちゃんも、ただいまー」
母さんとの抱擁が終わって、今度は母さんの両手を繋いで引張って甘えて、
肩までのブロンド色の髪がふわっとしながらこちらに声掛けてきた。
「お帰りロア、今日もレイナたちと遊んできた?」
「遊んでないもん、今日はお手伝いしてたよ」
若干頬を膨らんでるロア。からかうつもりではないが、まあかわいい。
「お手伝い?」
ロアは一本の指を唇につついて
「えーとね」
「そーだ」
手を合わせて母さんは言う
「そろそろおやつの時間だし、お茶を飲んで休憩しよう」
「わーいおやつ!」
感情を全身で表現するのが得意なロアは手を広げてドアの向こうに消えた。
小走りして行ったロアを見て微笑む。
「ふふ、タロートも一緒にどお?」
「ううん、私はいいや」
「この時間はそんなにお客さんいないから大丈夫よ?」
「店頭に人がいないのはだめだろ」
カウンターから帳簿を取り、広げて目を通る。
「もう、真面目なんだから」
両手を腰に、頬を若干膨らんで母は言う。
さっきのちっこい方の膨らむ顔と似てて可愛いと思ってしまう。
「むぅ…あとでお茶持ってくるね」
そう言って母さんもドアに向かう
「うん、ありがとう」
母さんが可愛いく思ってしまうのは、仕方ないと思う。
なにせこのラベリャ西区公認一、二を競う美人でしたからな。
腰まではいかないが、サラサラのブロンド色の髪に翠色の瞳。
祖母からの話だと、私が生まれる前は、母さんのために店を通う男は列を成すほど
だとか。それほどの美少女看板娘だったとのこと。
私が生まれる前ということは、つまり少なくとも12年前のことか。
カラーン カラーン
「いらっしゃいませ!ようこそ、J&R道具屋へ!」
「こんにちは」
店のドアを開けて挨拶してきたのは
「レイナか、いらっしゃい」
セミロングブロンズ髪の可愛い女の子でした。
「今日はどんな品をご所望で?」
遊び心で東区の執事の仕草を、キザな商人の商売文句を真似した。
「もう、なにそれ」
ちょっと拗ねた笑いをしながら
「えーと、予備の針と、べにの糸とー、石鹸」
ロアを届けて来てのついでにお使いでも頼まれたかな。いつものことだ。
「はいよ」
棚から注文の品を取り、丁寧に包む
「これでいいのかい?」
「うん、ありがとう」
レイナは包んだ物を抱える
「そいえば今日ロアと何したかな」
「あー、今日はね、ロアちゃんとお裁縫の練習したの」
「ほうほう、裁縫かー」
ロアが針糸と格闘する姿を想像する
「何か作りたいものでもあった?」
「ふふ、ひみつだよー」
レイナは指を唇に当ててウィンクする、可愛いからやめて欲しい、ほれてまう。
「ま、いいけどさ」
小さく肩を竦める
「今日はもう帰るね」
「ああそだ、これまけるよ」
帰ろうとするレイナを呼び止める
「これは?」
「豆の菓子だ、いつもロアに付き合ってくれたお礼」
今度はこっちが指を唇に当てウィンクする
内緒だよ?と言わんばかりに。
「もぅお兄ちゃんは…ありがとう!」
若干頬が染め恥ずかしがるレイナ、やってるこっちも、いや、かなり恥ずかしい。
「またね」
「うん、また」
手を振りレイナを送り出す。
カラーン カラーン
なにも、可愛い幼馴染に好かれるようとこんな行動を取ってる
ってわけじゃあない。
妹へのサービスでもある。
どういうこと?
まあ慌てるな。
さっき言及した、西区の二大美女の片方は実は、宿屋の女主人のであり、
そしてレイナの母親である。
――そしてレイナは私の幼馴染であり
私の半分の血繋がった妹でもある――
―――――――――――――――――――――
最初に言うべきだったかもしれません。
この作品は、コメディではありません。
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