第2話 油断大敵

不意に体を衝撃が走り抜け、

体は倒れ、

視界は黒一色になった。

駄目かと思ったが、再び目の前が明るくなった。

慌てて起き上がると熊が振り返り、此方に進行方向を変えようとしていた。

その顎には斧が深々と刺さったままだった。

周りを見ると、少し離れた所に倒木があった。

そちらに向かって走っていくと、熊は追いかけてきた。

倒木の前で立ち止まり、引き付けたところでそれを潜った。

熊は顎を突き出してセルムを捕まえようとする。

しかし届くことはなく、

無事にセルムは倒木の反対側で立ち上がった。

熊がセルムに飛びかかろうとしたその時、バチンと音が森に鳴り響いた。

下顎の無い熊がセルムの前に一頭座っていた。上顎の真ん中に斧の刃は刺さったままで、地面には熊の下顎と柄が落ちていた。血は吹き出して、力無く熊は崩れた。やったぞ、と思ってソトの方を見ると自慢のレイピアは持っておらず、上着を振り回していた。

刃の無くなった柄を拾い上げ、

ソトを襲う虎に突進した。

すると後ずさっていたソトは木の根に躓いた。

虎は前足をソトに乗せた。

しかし、危険度が此方の方が高いと思ったのか、

噛みつこうとする動作を止め、此方を向いた。

棍棒を振り上げる。

しかし、それを振り下ろす必要は無かった。虎は泡を吹いて倒れた。ソトが初めに頭蓋骨に突き刺したレイピアがそのままになっていたからだろう。

「ありがとう。助かったよ。」

「そんなに汗をかいて、お前らしく無いな。」

「仕方がないだろう。頭蓋骨に穴を開けてもしぶとく動き続けるから。」

「…解体するか。」

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