第1話 いつもの朝
「あーよく寝たー」
そう呟きながら私はベッドから起きる。 今日はいつもより30分も早く起きてしまった。なぜなら大好きな小説フォースタ王国物語の新刊が発売される日だからだ。フォースタ王国物語とは、今人気の恋愛小説である。要するに今よくある、バラ色の令嬢物語だ。 悪役令嬢が存在したり、ヒロインは準男爵家だが、あろうことか王子と恋に落ちてしまうという話。
私の名前は柴谷雛で、普通のOL。今日は早く起きてしまったため、せっかくだから推しの好きな食べ物を朝食にしようと思い、キッチンに立つ。私の推しはポテトグラタンが好き。料理はまあまあ、出来る。作り方は簡単で、ホワイトソースを作る必要はなく、生クリームをたっぷりかけてパン粉をのせて焼き上げるだけという手軽さであっという間にできてしまう。パンやごはんとの相性も良く、お酒も進むらしい。
そして作っているとおいしそうなにおいが充満する。朝からグラタンは重いが、作ってしまったので食べるしかない。
食べてみると、 うん、我ながらいい味だ。それにしても私の推しは王子なので、やはり良いものを食べているだろう。 現時点での小説ではヒロインと第一王子は結ばれることが確定している。まあでも、私には関係ない。
─ なぜなら私の推しはフォースタ王国の第二王子だからだ。きっと私の推しもヒロインが好きだったんだろうが、実の兄に取られては何もできないだろう。 可哀想だが、これは作者さんに感謝するしかない 。だから推しは私のものなのだ!
だから安心して私も小説の続きが読める。
と、こんなことを考えているうち、そろそろ家を出なければいけない時間になった。
そして今日も仕事場へ向かう。
私の尊い推しを誑かしたあの女…絶対に許さない!!─私はあの女から私の王子様を守り抜く─ 水瀬つばさ @kiyusakanano
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