航海第二十五日目 敗北

(平成11年10月4日〔月〕晴れ 翌々日記入)

 なんということだ。角川師つのりんおししょうは自分の身分を証明するものを何も持っていない。さらに、それだけではないのだ。まさか、自分の年齢すら把握していないとは……。

 私は倒れた。私は深い闇に閉ざされた。私は負けたのだ。もはや、ダメ人間を名乗ることは許されない。ただ、角川師の健闘を祈るだけだ。


 それはそうと、完全に意識を失っていた私は病院へと運ばれた。メガネをかけたインテリ風の医者と27歳の看護師が私の容体を見ている。

 しばらくして、医者が口を開いた。

「これはもうダメだ。早くゴミ箱に捨てなさい」

 看護師(27)は私をクリックするとゴミ箱まで運び、人差し指を離した。


 こうして、私はゴミ箱世界の住民となったわけだが、この時の私は半死人のような状態で昏睡していた。私はこれから起こる“最後の冒険”とも言うべき事件のことなど知るよしもなかったのである。

 物語はついにクライマックスへと動き始めたのだ。


(二十六日目につづく)

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