第32話 行く手に立つものはすべて
「何事だっ!」
「か、火事です! 突然に火が上がって……!」
「火事は見ればわかる! ええい、眠っているものを叩き起こせ! サパナの隊は消火を! イトマルカの隊は
部下に矢継ぎ早に指示を出しながらクアンライは、そこで燃え上がる厩舎からこちらに駆けてくる
「クアンライ殿!」
「カマルパイ殿、これはいったい何事ですか!?」
呼びかけに手綱を引いて
「案内の兵が持っていた松明の火の粉が迂闊にも飼い葉に燃え移りました」
火の不始末。アトコは兵士たちの間でもそつのない堅実な仕事をすることに定評のある男で、このような粗忽な失敗にクアンライの脳裏にはまさかとの思いが過ったが、その思考は間髪なく告げられたカマルパイの言葉に遮られた。
「このような状況ですが、私には急使の使命が御座います。開門を願いませんか?」
「今ですか?」
クアンライは夜空を焦がす炎に混乱する
「元々、
「わかりました」
クアンライには判断の余地はなかった。王法と王命には従うのみである。部下に門を開けるよう指示を出す。
「感謝します。では!」
「
謝辞を告げると馬首を門へと向けて走り去るカマルパイの背中に、クアンライは旅先での幸運を祈る言葉を贈った。そして火事のより正確な状況を把握するべく燃える厩舎へと足を向けると、その途中で二頭の
「火に追われた
クアンライの頭に最初に浮かんだその推測を否定するように、その二頭の
「――な、いかん! その
クアンライはその二頭の
前を走る
「門を破る気だ! 止めろ!」
そう左右の兵士に命じ、自身も
剣と
美貌の少女。
(なんだ、この恐ろしく美しい――)
(
その直感の印象が戦慄を生み出す前に眼前の
「あ――」
衝撃とともに頭蓋を打ち砕かれて仰向けに倒れるクアンライを一瞥することもなく
その目指す先には開かれようとする
「――な! と、とまれ!」
それを見送ったカマルパイ――
「門破りとは大それた真似を――すぐに私が追い掛けて捕らえる! まずは
その堂々たる
後に残された
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