優しさという言葉について

強くなければ生きていけない

優しくなければ生きる資格がない


わたしが好きなレイモンド・チャンドラーの言葉です


できれば優しい人でありたい

きっと誰もがそう思いますよね


でも優しさっていったい何でしょう?

雨が降って寒い日に犬を散歩に連れてかないのが優しさか

運動不足にならないよう嫌がっても散歩に連れて行くのが優しさか

難しい問題です


調べてみると、優しさの語源は

元々は、痩す(やす)という

身が痩せ細るほどに恥ずかしい

という意味からきているそうです

それが 控え目で慎ましやかである様子 となり

こちらが恥ずかしいほど思いやりがある 

というふうに変化していったそうな


なんとも日本人らしい発想だなぁと思いました


ちなみに英語ではkindnessと言いますが

kindには種類といった意味もあります


実はkindには生まれながらの性質 という意味もあって

それが

生まれながらの→純粋、無垢な→優しい

といった意味となっていったそうです

いわゆる性善説ですね


だとしたら人は生まれながら優しい種なのでしょうか?

昨今の暗いニュースを目にすると疑問も湧いてきたりいたしますが……


また、優しいという漢字は人を憂うと書いて優と書きます

ここで憂とは

大切な人を亡くして悲しんでたたずむ人の姿であり

それを同じように悲しみ寄り添う人

と書いて優という漢字になります


この漢字には優れているといった意味もありますよね

今回調べてみて初めて知ったのですが

この優という漢字は

「わざおぎ」とも読むのだそうです

ここで わざおぎ の意味は

こっけいな動作をして歌い舞い、神や人を慰め楽しませる人

とのことで、いわゆる道化師(ピエロ)のようだなぁと思いました


ちなみに わざおぎ という言葉が初めて使われたのは

天鈿女(あめのうずめ)命が天照大神を岩戸から招き出すために

踊った際に用いられたのが最初だそうですよ


つまりこれまでの情報を整理すると

人は生まれながらに優しい性質であり

自らを恥ずかしいと、控え目で慎ましく

人の悲しみを自分のことのように寄り添い悲しみ

時にはおちゃらけて人を和ませ慰める

それが 優しさ という言葉に含まれている意味となります


わたしの好きな吉野弘さんの

夕焼けという詩にこんな一節がありました


ーーー


やさしい心の持主は

いつでもどこでも

われにもあらず受難者となる。

何故って

やさしい心の持主は

他人のつらさを自分のつらさのように

感じるから。


ーーー


優しくありたい

きっと人は誰もがそう思うと思います


でも、人に対して

優しくあれ とは軽々に言えないなって

思いました


もし誰にでも優しい人がいたら

しんどいからやめなよって本当は言ってあげたい

きっと優しい人ほど自分を責めようとするから

せめて何も言わずに抱きしめてあげたいです


心まで


強くなければ生きていけない

優しくなければ生きる資格がない


わたしが好きな言葉です

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