来世では結ばれるように

栄養剤りぽべたん

第1話 来世では結ばれるように。

-私は非常に妬んでいる。 常にクラスの真ん中で、最近人気の『配信者』という存在に。


 それもそうだ、私はにとって唯一無二の友達-いや、それ以上の存在の有栖がその『配信者』にお熱なのだから。


『配信者』はクラスでは常に誰かしらに囲まれており、私は所謂陰の者ー・・・いや、そもそも有栖ちゃん以外に興味がないともいう。


その輪の中に入る気力もないし興味もない。




・・・その輪の中に有栖がいなければ、この醜い嫉妬もないだろうに。




「あ、ごめん皆!もう帰って準備しなきゃ…ペットの事も心配だからね、また明日会おうね!バイバイ!」


 そういって『配信者』はカバンを持ち、廊下へ飛び出していった。『配信者』を輪にしていた人は少し残念そうだが、配信で会えるだまた明日も会えるだなと話をしているのが聞こえてくる。


 その間私はというと…机に伏せていた。いつも人がいなくなるか有栖が声をかけてくれるまで教室から出る気もしない。その日の授業の復習でもしていた方が有益だ。


…有栖が声をかけてくれたら、そんなものいつでも放り出して駆けて行ってしまう程度の有益さだが。


 そうして机に伏せていると、私の頭の上から声が降ってくる。


「天理ー!」


 私が聞き間違えるはずがない、有栖の声。ただし、今は少し・・・いや、だいぶ不貞腐れている。少し意地悪だが寝たふりを続ける。そうすると-


「天理?今日は寝てるの?…もー、起きてよー!」


 愛しい彼女は私に触ってくれるのだ。いつも肩や背中をその手をもって私に触れてくれる。


「…ごめん、寝てたの。皆いなくなるまで・・・」


有栖は苦笑いしながらも、周りを見渡す。


「いつも天理はそうだよねぇ、私以外にも友達作ったりしないの?」


-…今日は少し有栖が私の心の闇の部分踏み込んできた。数年以上関わりを持っているが、初めてのことである。


「…私は…有栖以外には友達を必要と思ったことないから…」


はじめてそこまで踏み込まれたが故に、つい本心からの言葉を言ってしまう。


 そこで私は今自分の吐いた言葉をすごく後悔してしまった。


-彼女に嫌われてしまわないだろうか。彼女に嫌われてしまったら私は-


しかし、そんな私の心は知らんとばかりに有栖は笑顔で


「そっかー、私も天理が大好きだよ!もう皆いないよ?」


 -…よかった。私には有栖しかいない。どうやら嫌われてはいないようだ。


「…ん、いつもありがとう有栖。帰ろうかな。」


 そうして私は机に入れておいた教科書やノートを通学用のカバンに入れようとすると-



「待って!天理。少し話しない?」



 有栖に止められる。それも肩を手で抑えて私が立ち上がらないように。


-…少し顔に出ていただろうか、私に有栖以外いらないという感情が-


「…いいよ、有栖だもん。この教室も私達以外いないし迷惑もかからないし。」


 そう答えると有栖は嬉しそうに私の膝の上に座ってきた。


-…ん?-


 この様な彼女の行動は初めてだ。・・・大胆とでも言おうか。私は所謂陰の者で、有栖は陽の者。そういった人間性は相反してしまうが、私は彼女が心の底から好きで愛している。


「いやー…えっと、えへへ。今初めて天理の本音を聞けちゃった。それがすごく嬉しくてさーそれで…」


 有栖は私の膝に座り、私の方を向いたまま延々と話し続ける。私はそれに頷いたり相槌を打つばかりだが、それどころではない。


 愛しい彼女が私に座り、私にキラキラとした目で見ている。

 


-脳が溶けてしまいそう…-



 以前から私は顔に感情が出にくいと家族にも言われていたが、今は耳か頬が真っ赤に染まっているだろう。


「天理?おーい、相槌ばっかり打ってないで天理も何か話してよー!」


 その言葉でハッとする。


「…うん、ゲームの話とか今読んでいる小説の話とかになっちゃうけど・・・それでもいい?」


「もちろん!天理の話聞くの私好きなんだー!この間話してた続き聞きたいなー?」


「…あのね、この間の続きだと最後まで話しちゃうんだけど…有栖はそういった…ネタバレとか気にしないの?」


 ねだられはしたが、私が読んでいたのは所謂メリーバッドエンドと言われているエンドを迎える。陽の者の彼女には刺激が強いのではないだろうか?


「いいよー!授業も寝ちゃうもん、小説なんて読めないから、天理から話振ってくれないと気になって夜しか眠れないよー!」


 ケタケタと笑いながらもわたしの膝の上に座り、肩に手をを置いたままの有栖。

それならばと私は先日から彼女に話していたその小説を最後まで語り終えてしまった。


******************************


 気付けば周りはもう暗く、校庭や体育館からしていた部活動の声も聞こえてこない。


「そっかー…最後は結ばれるけど、二人以外はいなくなっちゃうんだね。」


 そう言うと彼女はようやく私の肩から手を離し、膝の上からも避け立ち上がった。


-もっと触れていてほしかった。-


「…ねぇ天理。私ね、ずっと天理が好きだったの。」




 彼女は今なんと?




 ニコニコと後ろに手を組み未だに今の言葉が頭の中で反芻している私に有栖は追い打ちをかける。


「一目惚れかな?でも日本って遅れててさー、同性愛って変だーって皆に言われるじゃん?…でも、私今の小説の話聞いて決心ついたんだー!」


 そこでなぜか彼女は私のカバンを手に持ち-


 いつもカバンに忍ばせているカッターを取り出し、また有栖自身のカバンからもなぜか出てくるカッター。

なぜ彼女が私のカバンにカッターがあることを知っているかもさておき、脳がついていかない。


「もっと大っぴらに私はイチャイチャしたい!あんなことやこんなこともね!でも世間が許してくれないし-」



 一緒に次の世にいかない?



 もう誰も残っていない教室に響く衝撃の言葉。

内心私も思っていた。LGBTを受け入れようという耳触りのいい言葉は聞くが、日本はまだまだ偏見が強く、さらに私達は学生。学生とは残酷な物で異物は排除する方向にある。


それならばと私が返した答えは-



 「うん。」



 ただ一言である。ただしこれはもう取り返しのつかない一言でもある。


 有栖はいつものキラキラとした笑顔で私にカッターを渡してくる。


「よかったー!天理に断られちゃったらどうしようかなーってヒヤヒヤしてたんだよ?でもよかった、天理も同じ気持ちで居てくれて!」


 チキチキと、カッターの刃が出てくる音がふたつ、二人しかいない教室に響く。


「ここかな?首だよね?カッターって薄いから刺さらないだろうし・・・首だよね!・・・来世は大っぴらにイチャイチャできる世の中で一緒に居ようね!」


 そして私達は互いの首へと-






『本日のニュースです。本日未明、○○高校にて女子生徒二人の遺体が見回りをしていた高校に勤める用務員によって発見されました。

警察の検分によりますと、その場に落ちていた刃物には互いの指紋しかついていなく、心中をした線で捜査を進めているとのことです。」


『クラスメイトによりますと「二人は仲が非常によかったが、その様なことをするとは思っていなかった」と驚きを隠せない様子で-』




fin

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来世では結ばれるように 栄養剤りぽべたん @ripobetan

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