第4話 職業案内所
「まずは職業、次にステータス割り振り、次に装備、最後にスキルだな。」
メモを片手にこれからすべきことを確認する。
エリザはこれからさらに強くなれることにワクワクしている様子だ。
ノースは各職業におけるスキル一覧をじっくり眺めながら思案している。
その横でリーリアはというと。
「はぁ」
「どうした?」
肩を落とすリーリアに問いかける。
「私、この中では常識人な方であると自負していました」
藪から棒に失礼なことを言われた気がするが、確かに俺も常識があるかと言うと、そうでもない。師匠によく怒られている。
「でも、ステータスなんでとっても重要じゃないですか、それすらも知らなかったなんて……」
「まあ、仕方ないんじゃないか?」
詳しく聞いたことは無いがリーリアは幼少期からお家の道場で外界から隔絶された環境下で修行に明け暮れていたらしいし、エリザも特定の居を構えず放浪の旅をしていたらしい。ノースはなんだかよくわからないところがあるし。みんなそれなりの理由でステータスやら装備やら、ちゃんと学んだことは無かったのだ。
「トウゴウさんはお師匠さんから教わったことは無かったんですか?」
『ソンナハイカラナモノハ知ラン』
ボフンと急に現れた師匠が答える。咄嗟のことにリーリアはぎょっと体をびくつかせるが、ある程度は慣れたようだ。
「師匠の次代にはステータスなんてなかったんですよね」
『強サトハ修練ト実践ニヨッテノミ磨カレルノダ。数字ヲポチポチスルダケナド軟弱ナ』
そういいつつ師匠は俺のステータスを勝手に開くとどれどれと値をいじろうとし始めた。
「やめてくださいよ師匠! それ大事なポイントらしいんですから! 興味津々じゃないですか」
『イジッチャダメカノウ……』
なぜかお爺ちゃん口調になりながら師匠がしゅんとしている。
「とにかく、過去のことを憂いていてもしょうがないからな! これからもっとぼうけんが捗ると思ってみんなでステータスや装備を整えよう!」
「そうですね……」
なおも落ち込んでいるリーリアを励ますと、ギルド内に併設されている職業登録窓口を発見した。
「おーここがそうだったのかー。 なんかあるなーとは思ってたが、意識したことなかったなあ」
あっはっはと笑うエリザをみてさらに肩を落とすリーリア。
「いらっしゃいませ、職業変更のご案内でよろしいでしょうか。」
クエスト案内の受付嬢と同じ制服を着た女性がにこっと営業スマイルをしながら語り掛ける。
「あーえっと、俺たち無職なので、新規登録? でお願いしたいんですけど」
無職と言う言葉にさらにリーリアが嘆息する。
「え、あなた達それなりに何度もギルドにいらしてますよね、もしかしてずっとむしょ…… あ、すみません、わかりました! 新規の登録の場合はこちらになります!」
出された用紙には希望する職業を記載する欄と氏名や基礎情報等の欄が設けられたシンプルなものだった。
これだけで職業が変わってステータスも上がるのかと尋ねると、これをもとに神官が女神様に宣誓を行って神からのパワーを授かりステータスが向上するらしい。神様すごい。
「皆様レベルはすごいですが、まずは初期職からしか選べませんので、こちらのリストからお選びください」
出されたリストには、剣士、魔法使い、アーチャー、シーフなど様々な職業が並んでいたが、その中に。
「あ、拳法家あるじゃん」
エリザが発見した文字列は確かに拳法家だった。
ノースはすでに発見していたらしくこちらを見あげながら手に持っていた一覧表上の拳法家の項を指さしている。
「じゃあ全員拳法家でいいな」
うんうんと頷いて全員でけんぽうと書き始める。
「あ、あのー、皆さん同じで本当にいいんでしょうか?」
「え?」
書く手を止めながら嬢の言葉に耳を傾ける。
「パーティは大体、バランスよく攻撃職、魔法職、回復職など組み合わせて、シナジーを発揮できるように編成するものなんです。これまではみなさん拳法で戦ってきたのかもしれませんが、この機にご一考なされてもよいのではないでしょうか」
少しの間手をためていた俺たちだが、すぐにまた用紙への記入に戻ると、書きあがったそれを一斉に嬢へ差し出した。
「全員拳法家で問題ない。これで登録してくれ。」
驚き唖然とする受付嬢。
「私たちは、どう転んでも拳法家です。それ以上でもそれ以下あでもありません。この世界における拳法の地位向上、そしてゆくゆくは騎士団ギルドを超えるほどの拳法家道場を開くことが私の、私たちの目標なんです!」
先ほどまでの様子とは見違えるように、リーリアが誇りと誠意を持った瞳でそう語った。
そうだ、彼女のその志と理念に賛同して俺たちはこうして集まったんだ。
それぞれ背景は異なれど、目指す道は同じ。拳法家としての道を究めながら世界に拳法のすばらしさ、そして理念を伝え不当な暴力を根絶すること、そのために道場を開き拡大させることが俺たちの目指すものであった。
受付嬢はしょうがないなと諦めた風で、しかしまっすぐな俺たちの意思に少し微笑みながら、用紙に認め印を記していった。
ん? と受付嬢が用紙を見直す。
「あ、これエリザさんとノースさんは”拳”の字間違ってますね。 トウゴウさんとリーリアさんも、これひらがなじゃなくて漢字で書いてください。書き直しお願いします」
赤面する一同。
あせあせと書き直し。3回ほど書き直しを終えたところでようやく受理されたのであった。
十分ほど待つと案内嬢から、女神様への先生が終わり正式に登録が完了したと報告を受けた。女神様も仕事が早い。というかこんなことまでやっているとは大変ではなかろうか?
「試しにステータスを開いてみてください」
ステータスがどれほど上昇しているのか期待に胸を膨らませながら、俺は宣言した。
「ステータスオ……」
『ステータスオープン!』
「ちょっと師匠!」
この師匠、絶対新しいもの好きである。
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