キバチのきい子さん
@88chama
第1話
みなさんはハチの絵をかくとき、どんなふうにかきますか。
私は数字の「8」に羽をつけて丸い頭をちょんとのっける。そこに長いアンテナを二本つけて、ハイ、できあがりっ。なんちゃって。 ちょっとへんかなって思うけど、これでもけっこうハチには見えますよ。でも、ハチってみんな胴体がくびれているとは限らないのですってね。知らなかったな。
これはその、胴のくびれていないハチさんのお話です。
ある日、キバチのきい子さんは町へ買い物に出かけました。この森の中で一番にぎやかな街の大通りに着くと、大きなお店の前に沢山の人だかりが(いえ、ハチですから人だかりとは言わないですね)していて、何やらとても騒がしい様子です。
何でしょう。きい子さんは近づいて見てみようと思いました。
「さあさあいかがですか。一丁目のれんげ畑で採れたハチみつですよ。」
「おいしいですよぉ。 美容と健康にはハチみつが一番!」
「本日ここに、ミス日本のミツバチみつ子さんにハチみつのPRに来ていただいています。 ちょっと感想を聞いてみましょう。」
「みつ子さん、れんげ100%のハチみつのお味はいかがですか?」
太った店長さんがみつ子さんにマイクをさし出しました。
「ええ、わたくしはとっても大好きですわ。だって一口食べますとふわぁっとれんげの香りがして、れんげ畑を飛んでいるような気分になれるんですもの。」
「お味もとってもまろやかで、すばらし~いですわ」
きい子さんはみつ子さんを取り巻く大勢のハチの輪の後ろから、とってもお上品に答えるみつ子さんを、頭のてっぺんから足もとまでしっかり眺めました。なんと言っても彼女はミス日本。 美人でスタイルは抜群。きい子さんは思わずうっとりとして、自分もどうやったらあんなにスタイルの良いハチになれるのだろうかと思いました。
「何かご質問は?」
店長さんはみんなを見まわして言いました。きい子さんはさっと手をあげると
「どうしたらそんな良いプロポーションになれるのですか」
と大きな声で聞きました。
「君きみぃ、ハチみつのことを聞いてほしいんだがねえ」
店長さんが困った顔をすると、みつ子さんはこう言いました。
「まずは痩せることね。 スタイルのポイントはこの細いウエストにありましてよ」
得意げな顔をして更にもう一言
「ハチみつと言えばプロポリスよ。 つねにプロポーションとは関係がふか~いのですわね」
きっと才女なんでしょうね、みつ子さんは。 外国語をまじえて答えると、みんなの視線はきい子さんに集まりました。
ちょっと太りぎみの体型に、みんなはにっこり微笑みました。
その日からです。 きい子さんは何とかしてあのみつ子さんのスタイルに少しでも近づきたいと考えるようになりました。そしてそれにはまず痩せること・・を第一目標に、きい子さんの涙ぐましい努力が始まりました。
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