参「Diva Driver」
目を開く。
(……あれ? 私、今、何していたっけ?)
千歳は首を傾げる。
自分は渡瀬
「歌子?」
「嗚呼……」歌子が生返事をした。「千歳……何でおるん?」
「そりゃア貴女、急に病室からいなくなるんだもの」
「御免」
「それで、ソレは何?」
テヱブルの上に置いてあるケヱス。その中にあるのは――
「――
大振りの剣が、一本。
「それも、見たことのない
「父ちゃんの形見、なんやって」
呟くように、歌子が云った。
「――ヱ?」
「父ちゃんがウチを連れてここに来て、そん時にこれを持ってたって、じっちゃんが」
「お父様は
「ちゃう。
「…………」
「それで、仏蘭西人の母ちゃんとの間にウチが出来て、でも戦争のぐちゃぐちゃで母ちゃんが死んでもて……父ちゃんも
歌子が泣き出しそうな顔をしている。
「ウチ、父ちゃんと母ちゃんが生きてるとこ、全然覚えてへんねん。薄情な娘やんなぁ」
「そんなこと――…」
歌子には五、六年より以前の記憶がないのだ。
きっと、そうならざるを得ないほどに、辛く過酷な毎日だったのだろう。
……歌子のことを痛ましく思う気持ちが千歳にはある。あるのだが、千歳の心は別のモノに囚われていた。
「ねぇ……歌子、その
初めて見る
「あはは。千歳やったら絶対喰いつく
歌子がケヱスの真ん前を千歳に譲る。
「善いわよ、お父様の形見を
「ちゃうねん」
「ヱ?」
「これな、じっちゃんですら
「…………へぇ?」
「云って呉れるじゃない?」
「あっ、触れる時はもっとゆっくり――」
「ヱ?」
刀身に触れた。
「――痛っ!?」
途端、指先に鋭い痛み。
「な、何よコレ……」
この痛みは知っている。
フレデリカや歌子が歌唱によって極限まで音子を活性化させた時に感じる、弾けるような痛み。
見れば部屋中で、蒼い光がパチパチと踊っている。
「この剣な、ほとんどが音子で出来てんねん」
「ヱヱヱッ!? 物質化した音子が、歌唱もなしに固定化されているの!?」
「こんなん、人類の技術で再現出来るとは思えへん」
「そんな、それって、まさか――…」
「父ちゃんが、コレを何処から持ってきたんかは知らへん。じっちゃんも知らん云うとった。けど、父ちゃんは仏蘭西から
「
歌子が
「
と、呟いた。
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