弐「我、夜逃げを決行せり(肆)」
歌唱によって
その始まりこそ、
中でも大活躍なのがヱネルギヰ分野である。
乏しい燃料による燃焼を何倍にも増幅させ、安価で安定した電力供給を実現して
国も歌唱女学院をたくさん建て、
「……す、
「日羅音学技術貸与条約」
『供与』ではなく『貸与』。
数年に及ぶ国内技術開発と外交努力により、日本は
が、
そして
「だって
千歳が暗く微笑んでいる。
「仮想敵国に軍需物資の供給を委ねているだなんて」
歌子は政治にも軍事にも疎い。疎いが、そんな歌子でも、
同国は移動要塞『大天使』と共に東へ東へと進軍を続け、進路上の街という街、国という国を文字通り轢き潰してきた。
道中の国は焦土にするか植民地化するかの二択。
そして、そんな新星
「で、でも……バレたら逮捕されてまう!」
「だから、他言したら殺すと云ったでしょう」
「あ、阿呆な……」
暗い笑みを浮かべていた千歳が、一転、朗らかな笑顔になり、
「なァんてね。大丈夫よ、もしこのことがバレても、手が後ろに回るようなことにはならないわ。だって条約で禁じられているのはフリヰデリケ式の設計思想の模倣であって、この子の基盤技術はフリヰデリケ式とは根本からして異なるもの。とは云え誤解を生みかねない行為ではあるから、他言無用と云うのは守ってね」
「こ、これを千歳が作ったん……?」
「そうよ。でも、この設計思想の名は残念ながら撒菱式でも千歳式でもない」
「どういうこと?」
「渡瀬式。貴女の御祖父さんが考案したのよ」
「――――……」
混乱している。考えが上手くまとまらない。
戸惑う歌子に、千歳が微笑みかけてくる。
「ね、歌子。この
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