Diva Driver ～誰ガ為之歌～

序曲「ウチの神様」

壱「新世界の幕開け」

　一九一五年、第一次世界大戦の真っ只中に、それは起きた。

　――グレヱトブリテン島への、巨大隕石の落下。

　覇権国家・大英帝國は二つの島ごと地球から姿を消し、西欧羅巴（ヨーロッパ）諸国もまた、言語に絶する大津波によって壊滅的被害を受けた。

　突如として宗主国（ヰギリス）を失った世界中の植民地は混乱し、あるいは独立を志向する勢力が蜂起し、しかして亜米利加（アメリカ）や帝政露西亜（ロシア）、あるいは大日本帝國による干渉を受けた。

　それから一年後、世界中を覆い尽くした粉塵がようやく晴れて太陽が見えるようになり、今や三国協商の盟主となった露西亜（ロシア）が西欧羅巴（ヨーロッパ）を席巻しようとしていた最中（さなか）に、その国は突如として名乗りを上げた。

『新　星（Nova）　羅　馬（Römisches）　帝　國（Reich）』。

　羅馬（ローマ）皇帝・フリヰデリケ四世を名乗る若干十四歳の娘は、対露最前線でいきなり歌声を披露するや否や、竜巻を起こして露西亜（ロシア）将兵を天高く放り上げ、あるいは爆炎を起こして露西亜（ロシア）の戦車団を鉄屑にして見せた。

　――歌姫（Diva）。

　隕石が地球中に巻き散らした粉塵、地球には存在しない未知のヱネルギヰを超常の力に変える、人間兵器。戦場を席巻する羅馬（ローマ）の戦乙女たちの登場によって、世界中の戦況は一変した。

　……そして、十年後。

　世界は、羅（ローマ）、米（アメリカ）、露（ロシア）、そして日（にほん）の遊び場になっていた。

　欧羅巴（ヨーロッパ）及び阿弗利加（アフリカ）は新星羅馬（ローマ）帝國に席巻され、中東ではオスマン帝國が辛うじて呼吸をしている。

　帝政露西亜（ロシア）が羅馬（ローマ）相手に延々と続く撤退戦を強いられている一方で、大日本帝國は大陸に大満州國を成立させ、朝鮮半島および東南亜細亜（アジア）諸国を併合し、大東亜共栄圏を築いている。

　英吉利（イギリス）が居なくなった世界で、印度（インド）は亜米利加（アメリカ）が掠め取った。

　中華民國は、東は大満州、北は露西亜（ロシア）、南は日本と亜米利加（アメリカ）に囲まれ、そして西から露西亜（ロシア）とオスマンの体内を喰い破るようにして攻めて来た新星（しんせい）羅馬（ローマ）帝國に圧倒され、今にもこの世から消滅せんとしている。