第170話 エロ島の改善
朝食後、準備をした我々はまずはジョニーのエロ島に向かうことにした。
ジョニーのアホが居ないので
私が見よう見まねでワープ魔法を使ってみることにする。
ナナシ、ジェーン、ナンヤ、セイが手を繋いで
さらに私がセイとナンヤの手を繋ぎ
「……移動せんと欲す。目的地ジョニーのアホの造ったエロ島!」
正確な島名を忘れてしまったので、無理かと思ったがあっさりと
片乳が打ち上げられた後の、おっぱい山の残りの方の山頂へと移動できた。
ワープするなりセイは山頂から島内をグルッと見回し顔をしかめて
「……百点満点中の二点だ。あの塩顔のブサメンの欲望の臭いしかしない」
ナナシが苦笑いして
「これでも、かなり私が修正したのだがね」
セイはニヤリと笑うと
「集落がいくつもあるようだが、最も酷いものをセイ様に見せてみろ」
ナナシが黙って東南の方角の大きめの集落を指さすと
セイはいきなり宙を駆けて、そちらへと風のような速さで行ってしまった。
慌てて、私たちも宙を飛んだり駆けたりしながら続く。
集落に降り立つと……ああ、形容したくない……。
頭がおかしくなりそうだ……よ、要するに、一糸まとわぬふたなりの集団が
四つん這いになって「ぶーぶー」とか言いながら
形容したくない色んな体液を各所から垂らして
汚いが大きな豚小屋が多数建てられている広い集落をはい回っていた。そしてそれを
黒のラバースーツを着た緑髪の目の大きなアニメ顔の小柄な少女が
「豚たち!もっと運動しなさい!筋肉が足りないわ」
などと言いながら、時折鞭で叩いている。
私はついナナシに
「修正してこれですか……?」
尋ねてしまう。ナナシは仕方なさそうに
「私はもっと過激さを抑えるべきだと提案したのだが
ジョニー君がこれが限度だと言ったからね。
これは、彼が学生の時に就寝時に思い浮かべていた大事な景色らしい」
「……」
寝る前にこんなものを想像する学生って……いや、あのアホのことはいい。
「せ、セイ様!なんとかしてください!」
セイはジッと集落を見回して
「ふむ……カルトムービーのワンシーンのようだな。
あのブサメンも中々いいセンスをしているじゃないか」
なんと嬉しそうな顔で褒めた。私が唖然としながら
「あの、セイ様?」
セイは軽く笑うと
「しかし、このままではこの者たちのためにもならないし
混沌の消費ともそれほど関係がない。アイ、ちょっと肩を貸せ。
お前の力の使い方は、ナンヤから聞いている」
私の肩へと触れると、宝石のように美しい両目を閉じて
銀髪をなびかせながら
「……ナビュルー派の天界画のような……。
いや、ミレマスの楽園にするか……待て、セイ様の才能ならば
二つを合わせたイメージを表出させるのも簡単か……」
ブツブツと頭のよさそうなことを言うと
「行くぞっ……」
そう言った瞬間に、辺りが白銀の雪の粉のようなものが舞い落ちる
光り輝く光景へと変わった。今まで悪趣味な動きをしていた裸人たちは
一様に高貴な雰囲気をまとう真っ白な羽衣を着て
そして清潔な髪形と肌になり、微笑んで歓談し始めた。
豚小屋は全て銀に輝く美しい材質の神殿や屋敷に変わっていて
辺りの木々では鳥たちが歌い、色とりどりの実が成っていた。
私より先にナンヤが感動した顔で
「セイさんって……やっぱり凄い人だったんだね……」
セイは脱力して
「一回、セイ様のことをランク落ちさせたみたいな言い方するなー。
セイ様はいつだって凄いぞ。これでこの島はセイ様の創った
セント・ネルファゲルト島に変わった。
どうだ?アイの苗字を付けてみたんだが?」
「こっ、光栄です……あ、あの……一つご質問なんですけど
アホのジョニーのエロ島をこの光景に変えると
どのくらい混沌が消費されるものなのですか?」
セイは腕を組んで辺りの光景を見回すと
「……この星の規模感がまだ分からんが
ゲシウム基準なら、常時三パーセントくらいだろうな。
なぜならば、本来ならば人々が混沌粒子に祈って
何億年もかけて変化させるはずの光景を一瞬で造り替えたからな。
どうだ?足りないか?」
瞬く間に三パーセントも混沌消費を進めてくれた。
超絶美しいうえに有能とか!このお方は、やはり神なのかもしれないよ!
「いっ、いえ……十分です。よかったです。
ミイさんはさっきまでのしょうもないエロ島に
さらに色んな人のエロを突っ込んでいこうとしてましたから」
ルナーはすでに参加させていた。セイは苦笑しながら
「あのストーカーは基本的に押すだけだ。引くということを知らないし
ましてや人の気持ちもわからない。もうひとつ言うと不器用だ」
「確かにその通りだと思います……」
ナンヤも難しい顔をしながら軽く頷いている。
ジェーンと共に黙って様子をうかがっていたナナシが
「とりあえず、ここは美しい神の島になった。
では、セイさん、次の仕事にとりかかろうかな?」
セイは嬉しそうに頷いた。
私たちは私のワープで天帝国都の宮殿へと戻ってきた。
ナナシが迷うことなく、宮殿内の端に増設されている
天帝国文書館へと私たちを連れて行った。
広大な図書館のようになっている三階建ての一階ホールへ行き
そして、カウンターの奥に座る司書の黒ローブ姿の老婆に
「芸術関連の古文書を。ナイアール時代のもので」
老婆は頷くと、立ち上がって軽い足取りで
近くの階段を二階へと上がっていった。
ナナシはホール内に多数設置されたテーブル席の一角を私たちに勧め
皆でまとめてそこに座って待っていると
ホールの上から風魔法で全身が鈍く緑に輝いた司書の老婆が降下してきて
ナナシの横にピタッと着地すると、五冊ほどの分厚い古書をテーブルに置いて
軽く頭を下げると、カウンターの奥へと戻っていった。
呆気に取られていると、ナナシは気にしない様子で
古文書を開いていくと、セイにその中に描かれている絵画を見せる。
「……いいな……失われた芸術だな?」
ナナシは継ぎはぎの顔で黙って頷くと
「これらを天帝国経由で、世界的に広めたい。
この世界の現在は人々が願うことや、想像すること自体が貧弱になっている。
それらを取り戻せれば、混沌粒子との共鳴で自然と混沌消費量が上がるはずだ」
「……宗教はあるのか?芸術の発展と宗教的な哲学は表裏一体だぞ?」
セイが目を細めて私に聞いてきたので勇んで
「モチモッチスウィーン教っていうリアル神が居る宗教がありますよ!」
そう答えると、セイは難しい顔で頷いて
「……その口ぶりだと、好きにコントロールできるということか。
なら、まずは、そのリアル神に会って
宗教画の傑作を描くところからだな。画家が必要だ」
「あっ、ルナーちゃんがそういうのに詳しそうだったけど
今、どこにいるんだろ……色々あり過ぎて忘れちゃった……」
親友失格かもしれない。ナンヤが手を挙げて
「偽の地球だよー?連れてくるのー?」
「……ごめん、ナンヤちゃん、お願いします……」
ナンヤは快く頷いてくれた。
しかし、ジョニーのアホとスズナカが居ないと全ての物事が
素早く改善されていき、そして次から次へと話が進んでいく。
ほんとにあの二人がせき止めてたんだなぁ……。
……頼むから、二人とも早めに帰ってこないように……。
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