雨音テレパス

@DEKAKAGAMI

第1話

1


「………………………………」

ビルの屋上は風がとても強く柵に捕まって居ないととてもたっていられない。自ら身を投げ出すことなくまるで世界が背を押してくれている様な気さえしてくる。目線を下に落とすと、忙しなく走っている人やベンチに腰かけている人、携帯を見て歩いているせいで電柱にぶつかる人など、少し眺めただけで色んな人達が生きているのが見えた。

「ねえ、飛び降りるの?」

いきなり声をかけられて、振り返る。

「そんな事、するように見えた?」

そうとしか見えないだろ、と自分の発言に苦笑が漏れる。目の前の少女は返答を考えるように顎に手を当て、口を開く。

「見えたって言うか、聞こえた」

「聞こえた?」

あまりに予想外の返答に、つい聞き返してしまった。

「そう、私、テレパスだから」

テレパス?馬鹿馬鹿しい、今どき子供でももう少し大人びた考え方をしている。

「信じてないでしょ」

「信じろって方が無茶な話だ」

「じゃあゲーム、私が君の考えてることを当てたらひとつ私の言うことを聞く」

「は?」

おかしな提案につい聞き返してしまった。そんな事なんで僕が付き合ってやらなきゃいけないんだ。

「そんな事なんで僕が付き合ってやらなきゃいけないんだ、でしょ」

驚いて目が点になる、今考えていたことをピッタリ当てられた。

「答えなくてもいいよ、正解っぽいし」

そう言うと目の前に立っている少女はふん、と自慢げに鼻を鳴らした。

「じゃあ約束通り、言うことを聞いてもらおうかな」

この子に何を言っても無駄だろう、と諦めて不服ながら柵の内側に体を戻した。

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