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 時間が来たので抜けると客先に連絡して、オンライン会議を開く。画面の向こうにはNさんと偉い方のOさんとOがいた。


「えっと、今回はどういう要件でしょうか?」

 Oがいきなりこんなことを言い出す。

「アジェンダは渡してますよね。見てないんですか?」

 ザード@が言う。

「あ、PC取ってきて画面共有します」

 どういうことだ。Oはもしかして本当に何も分かっていないのか。


 その後Oは画面共有しようとしたが上手く繋がらなかった。


「んで結局私はいつ辞められるんですか?」

「以前も言いましたが僕打合せに出れなくて内容をよく理解していなかったんですよね」

 そう言う話をアジェンダに書いた記憶はないが、Oは一体何を言ってるんだと思いつつ話を続ける。

「えっとね、辞めるって言ってる社員を辞めさせないって下手すると労働基準法違反になりますよ? それ分かってます?」

 Oはフリーズした。

「辞める辞めないだけじゃないよ。Oさんね、営業部としてザード@の売りが欲しいっていうだけの言葉を言ってしまってるの。んで売りが100欲しいからザードさんは6月の給料なしねとまで言ってるの。このままだと会社が労働法違反で捕まるの。そのことわかってます?」

「はい」Oが何か言っているがこのはいは一体なんだ。


「なんか分かってないみたいだけど、それだとOさんも会社に良いように使われて不当に安い賃金でこき使われたりするよ。労働基準法を分かっておくのは大事だよ。ですよね、Oさん」

 ややこしいが偉い方のOさんに話しかけてることは通じるはずだ。

「ザードさんのおっしゃるとおりですね」

 Oは相変わらずフリーズしていた。


「で、アジェンダの通りに進めたいんだけど本当にちゃんと読んだんです?」

 ザード@が問いかける。

「全体として話す順番がおかしいとかなんとか……」

 またOが変なことを言い出した。

「確かにそれも書いたけど、そうじゃないでしょ。私の書き方が悪辣だったのは認めますが、そう言う内容じゃないですよね? Oさん」

 一応偉い方のOさんに話しかけたつもりだが、どっちに向けての言葉だとしても通じる言い方になってしまった。そして案の定Oさんはフリーズした。


 仕方ないので固まっているOに説明する。

「辞めたいと言ってるのに6月のテレワークの調整だけしたら、『営業部としては6月分のザード@の売りを確保したい』というだけの意味になって、結果的に会社とザード@は不当な労使契約を結んだと言うことになります。これは大丈夫ですか?」

 流石に偉いほうのOさんが助け舟を出した。

「ザードさんの仰ることも理解できます。今後そのようなことが無いように指導いたします」

 しかし既にこの場は話し合いがどうこうではなく吊し上げの様相を呈していた。


「んでさ、結局私の内定先が6月から来てくださいって言ってきたらOさんはどうするつもりだったんですか?」

 相変わらずOさんは固まっている。

「結果的にはともかく、とんでもないことになる可能性もあったって理解してます?」

「はい」

「でさ、そもそもOさんどうやってザード@の退職手続きを進めるつもりだったの? あんた決裁権ないんでしょ? そりゃ中間業者に電話して、客先に電話して、調整してれば仕事した気分になると思いますよ。定時後には『ああ、今日も頑張ったなあ』って感じでしょうね。でもそれ何の意味もないんですよ。Oさんの権限じゃあ何も決められないんだから」

 流石に偉い方のOさんが話に入ってきた。

「私は新卒で営業の仕事について、当時の上司からまず言われたのは『社長としてお客様のところに会いに行くという気持ちでいろ」という事です。そして案件を取るために現場判断で『はい、それでやります』と即答しないといけない場面も営業職にはもちろん多々ありますが、そこんところの指導がO君に向けては足りていなかったのかなあ」

「つまり根本的にはOさんの実力が足りていなかったと」

「いや、というよりも営業としての自覚だと思う」偉い方のOさんはバッサリいってしまった。


 こんな感じで時間になったので話し合いは終わりとなった。大体伝わったと思うがこれが真相だ。


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