帰ろうか?
三人で、ビールを飲んでいた。
500ミリを一本飲み終わった頃に
心春が、タクシーを呼んだ。
「スマホ、貸して」
秋帆に言われて、俺は、スマホを貸した。
秋帆は、割れたスマホの画面で、必死に番号を押してる。
耳には、当てれないから、スピーカーで灰原に電話をしている。
ガラス代を払うのと鍵を返したいと言っている。
その声を聞くと、怒りが沸々と沸き上がってくるのを抑えられない。
「待ってからでいいか?帰るん?」
「うん」
「美月は、会わんように先にタクシー乗っとけよ。」
「もう、大丈夫やから」
そう言って俺は、笑った。
「ほな、下降りよか」
鍵を閉めて、外にでた。
心春が、タクシーに待ってもらって行き先を告げていた。
病院で、手当てを受けた灰原がやってきた。
「ガラス割ってごめん。これ、鍵。後、割れたガラス代。今、これしかないわ。どうしよ?」
「充分やわ、こんだけあったら」
「ほんなら、それでええかな。悪かったな、ごめんな」
「こっちこそ、ごめん」
そう言った後に、灰原は俺を見る。
「美月、今までごめん。俺もう二度と、お前に関わらんから…。元気でな、じゃあな」
「うん、さようなら」
そう言って、手を上げて俺は、タクシーに乗った。
ふと、急におかんが心配になった。
みんなが、タクシーに乗って出発したのと同時に話す。
「おかん、許せてないと思うねん」
「そうだろうね」
心春も、そう言った。
「今かて、
「そやな」
「おかん、ホンマに心から許せてんのかな?」
そう言った俺に秋帆が、
「大人って色んなもん飲み込まなアカンから厄介よな。」
そう言いながら、窓から外を見てる。
「飲み込んだら、おかん壊れてまう気がするねん。」
「吐き出させてやったら、ええやん。心春が美月にしたみたいに俺が美月に言ったみたいに…。その
そう言って、秋帆が俺に向いて笑ってきた。
「そうやな」
「お母さんにとっては、美月は子供だよ。だから、子供として話したらいいんだよ。」
心春が笑ってくれる。
「ありがとう、二人とも」
そう言って俺も笑った。
何が正解か、間違ってるかなんかわからないのが辛い。
殺したいと思った気持ちとそんな事してもこっちゃんは生き返らないと思った気持ちが、身体中を駆け巡ったら殺るしかないとしか思えなかった。
「あいつ、殴ってスッキリしたんか?」
秋帆の言葉に首を横にふった。
「足りんかったやろ?どんだけやっても」
俺は、その言葉に頷いた。
「わかるんやな?」
「そやな。そんな気持ちもった事あるから、わかるよ。」
そう話した時に、二人のマンション近くにタクシーが止まった。
タクシーを降りた。
秋帆が、俺に話す。
「あそこで、あいつを殺っても足りんかったと思うで。憎しみって、そんなもんやと思うで」
「だから、飲み込むしかないんか?」
「俺は、そうやと思う。だって、殴っても足りん、殺っても足りんってなったら、もう許すしかないやん。」
「そうだね。嫌でもそうするしかないんだよね。」
心春も秋帆も泣いてくれてる。
「そこにいくまでが、しんどいんやで。美月のお母さんは、もう最初から飲み込もうとしてる。でも、それをやったら壊れてまうと思う。」
「わかってる。」
「だから、美月がお母さんの抱えてる言葉ちゃんと聞いたりや。」
「うん。」
そう言って、俺は、泣きながら笑った。
「帰ってゆっくりお母さんと話しなよ。」
「ちゃんと二人で話や」
「うん」
俺は、二人に手を振って歩きだした。
こっちゃん、おとん、俺が、おかんちゃんと守るから…。
おかんが、壊れてしまわんように俺がちゃんと守るから…。
だから、最後までちゃんと見守ってて欲しい。
俺は、マンションに帰ってきた。
鍵を開けて、ゆっくりと中に入る。
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