双子の姉ちゃん
「こっちゃん、何でおるん?」
「みっくん、これから先何があっても幸せになる事以外考えたら、アカンよ」
「こっちゃん、何言うてんの?」
「約束して」
「そんな約束せーへん」
「アカン。みっくんはいっぱい苦しんだんやから幸せになるんよ」
「こっちゃん、置いて幸せなんかなれんよ」
「なるんよ。幸せに私なんか忘れてならなあかんよ」
こっちゃんが、いなくなってしまう。
待って行かないで
行かないで
「こっちゃーーん」
「俺、こっちゃんちゃうで?」
えっ?秋帆が、覗いてた。
「こっちゃんって誰?」
「あっ、双子の姉ちゃん。」
「へー。こっちゃんって呼んでたんやな」
そう言って秋帆が、お水を渡してくれた。
「寝てたんやな、俺」
「うん、朝までグッスリやったよ!」
「心春は?」
「部屋で寝とるよ。」
俺は、水を飲んだ。
「ちょっと話してもええかな?」
「俺でよかったら、聞くで」
そう言って秋帆は、俺の隣に座った。
「姉ちゃんの事なんやけど」
「うん。」
「俺が、姉ちゃんをこっちゃんって呼んでたんわ。生きてる時までやった。死んでから、こっちゃんって呼ぶのやめた。」
「うん」
「こっちゃんって呼んだら、もういないって思ってまうから。呼ぶんが怖なった。」
「うん」
「秋帆、こっちゃんを殺したん俺やと思うねん。」
「なんでや?事故やったんやろ?」
そう言って、秋帆が覗き込んできた。
「事故した運転手が、言うたんやって。女の子がフラフラ出てきてブレーキ踏んだけど間に合わんかったって」
「そうやったんか、でも見間違いかもしれんやろ」
そう言って秋帆は、俺の背中を擦ってくれる。
「昨日もやけど、俺があんな風になったの秋帆も知ってるやろ?」
「下半身の違和感か」
「うん。4月4日の朝、俺はあいつ等に呼び出されてん。」
「うん」
「学校やなくて、公園のトイレやった。」
「うん」
「俺、あいつ等にキスされたり身体中触られて昨日みたいな事になってん」
「うん」
「そんな俺をこっちゃんが追いかけてきててん」
「うん」
「俺は、助けに来てくれたこっちゃんに見るなって叫んだ。」
「うん」
「こっちゃんと体の造りがちゃうんやって。毎回こんなんなって俺は気持ち悪くてたまらんって。死にたいってもう生きてたくないねんって泣いた。」
「うん」
「こっちゃんは、俺に汚くない。悪いのは、あいつ等でみっくんやないって、何度も言うてくれたんやけど。俺は、こっちゃんに帰れ見るな、こっちゃんに俺の気持ちはわからんねんって言うた。」
「うん」
「こっちゃんは、次の日の朝、まだ日が昇ってまもない時間に死んだ。俺は、こっちゃんにごめんねも言えんかった。こっちゃんを一人ぼっちで死なせてしもた。俺も一緒に行けばよかったんや。」
涙が、止まらんかった。
フワッて抱き締められた。
「そんなんで死んだんちゃうよ。だから、自分を責めるなよ。美月は、姉ちゃんの分も生きなアカンで」
俺は、秋帆に抱き締められながら泣いた。
ずっと、苦しかった。
こっちゃんを殺したのは、俺でおかんとおとんが自殺や言う度、胸が締め付けられて苦しかった。
こっちゃんを殺したのは、俺だって言われてる気がした。
秋帆が、俺から離れた。
「そういえば、お母さんから、かかってきてたで。」
「おかんから、かけるわ」
「ああ、俺はリビングおるわな」
「うん。」
俺は、おかんにかける。
「もしもし」
「もしもしおかん、もう帰るか?」
「まだええけど、お昼ご飯はみっくんと食べたいわ」
「わかった。じゃあ、昼までには行くわ」
「駅で待ち合わせな、11時半やで」
「わかった。バイバイ」
「バイバイ」
おかんと電話を切って、リビングに行った。
秋帆が、俺に気づいた。
「スーツ、かけてるで。そこ」
そう、言われてパジャマ着てるのに今気づいた。
「シワになるから、着替えさせたで」
そう言いながら、秋帆がコーヒーを持ってきた。
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