俺の王子様-3lover-

悪夢

「美月、お前本当は女の子やろ」

「胸さわったろや」

「いや、俺らと一緒やで」

「ハハハ」「アハハ」

うーん、目を開けたいのに開けれない。

夢を終わらせてくれない。

「美月、やっぱりお前は女や」

「ほら、キスしたるわ」

「やめて」

「それって誘ってんねやろ」

「そんなんしてない」

かわるがわる、キスをされる。

いつまで、続くんだろうか？

コンコン

「なんや、隣いけや」

ゴンゴン

「うっさいな」

ガタッ　ノックがしつこいから扉を開ける。

「うんこしたいからでろや」

「隣あいとるやろが」

「紙ないから、邪魔や、どけ」

そう言って彼が、そいつらをトイレから出した。

ガバッ…はぁはぁ　はぁはぁ

やっと、夢から覚めれた。

助けてくれたのは、知らない子だった。

嬉しかった。

初めて、自分が何をされているのかわかってくれた。

二人の彼が、俺という存在を認識してくれた。

それだけで、充分だった。

あいつらには、小学校5年生になってから、ずっといじめられていた。

名前が、美月だから女やとからかわれ胸を触られたりした。

確認って言われて、あそこも触られたり、そしたらやっぱり男やったって言われて終わる。

小学校の頃は、拒むと体の大きい佐々木に殴られた。

中学にあがると、佐々木のかわりに沼田が殴るようになった。

そのせいで俺は、奴らの玩具から抜け出せない日々を送る事になった。

胸を触られたり、キスをされたりした。

ある日、キスより先に興味を持った灰原に俺はトイレに呼び出された。

いつもみたいな、チュッて軽いキスじゃなくて、気持ち悪いキスだ。

「もっと先にいきたなったやろ」

「優しくしたるから」

「なにすんねん？やめて」

「やっぱり、女の子や。美月は」

助けてくれたのは、彼だった。

ずっとそうだった。お陰で、灰原に、キスより先をされる事はなかった。

でも、キスだけは、どうしても拒否できなかった。

高校生になりやっと彼等から離れられた。

俺は、中学で男にそんな事をされていたから、高校生になると

女の子と何人も付き合った。

告白されては、付き合ってキスもその先へも進んだ。

でも、高校を卒業したのと同時にやめた。

あれから、17年。

彼女も結婚もしてない。

たくさんの人と付き合ったのに、性に対する嫌悪感を拭い去る事は、一度も出来なかった。

おかんには、二十歳の時にいじめの話しも全部ぶちまけてやった。

そしたら、おかんはあんたが恋愛するのも結婚もお母ちゃんは諦めるからって笑った。

「はぁぁ」

俺の人生最悪や。

俺は、もっかい目を瞑った。

「毎日、キスされてんのか？」

「えっ」

「こんなに、赤くなってしもうて」

そう言って優しく唇を触られた。

「いや」

いつもみたいな嫌な気持ちは、少しも感じなかった。

「リップやるわ。ちゃんとケアせな、あかんで。」

「秋帆(あきほ)、ここにいたん？誰、その子？」

「美月君やで」

「へぇー。僕等と一緒で女みたいな名前つけられたんやな。」

「心春(こはる)そんな言い方するなよ。」

「ごめん、ごめん。やけど、ホンマに綺麗な顔やな」

「間違えられてもしゃーないな」

「二人も綺麗な顔してるで」

「そんなん照れるわ」

「毎日毎日、キスされてるみたいやねん。」

「酷いことするな。」

「なにこれ？」

「飴ちゃん。じゃあ、行こ、秋帆」

「じゃあな。美月君」

そこで、目が覚めた。

俺は、起き上がってリビングに行く。

(中学校の同窓会)

秋帆君と心春君。

二人の事、忘れてたな。

それからは、キスより先をされないように、二人がいつも助けてくれた。

なのに、ちゃんと顔が思い出せない。

顔が綺麗だった事と、女子から人気があった事以外に俺はちゃんと二人を知らなかった。

他の人には、会いたくなかったけど…。

二人には、会いたかった。

二人は、俺のヒーローだったから

でも、あの街に行くのが怖い。

どうしたらいいんだろう

どうしたら

考えるのをやめた。

歯を磨いて、また眠った。