第2章〜初恋のきた道〜⑤

 竜司が部屋を立ち去ったところで、壮馬は、クッションのある場所を四葉に薦めて、彼女に、気になっていたことを聞いてみることにした。

 放課後直後に白草四葉が希望した、『達っての願い』とは、


「《竜馬ちゃんねる》の撮影および編集を行っている部屋があれば、見せてほしい」


というモノだった。

 彼女が、なぜ、そこまで自分たちに興味を持ってくれるのかについては、大いに気になるところではあるがーーーーーー。

 それは、竜司が戻って来てからでも、確認できる。

 そこで、壮馬は、休み時間中にクラスの女子二名から依頼された件について、それとなく探りを入れてみることにした。


「転校初日で、こんな質問をするのもナンだけど……ウチのクラスには、馴染めそう? 仲良くなれそうなヒトは居た?」


 慎重に質問を切り出す壮馬に、四葉は、


「うん! みんな親切そうだし! 仲良くなれそうなヒトは……そうだな〜、まだクラス全員のことは良くわからないから……黄瀬クンと黒田クンが仲良くしてくれると嬉しいな」


 女子に感心を持たない壮馬を別として、一般的な高校生男子なら、それだけでオチてしまいそうな、極上の(営業)スマイルで応える。


「まぁ、ボクたちのことは置いといて……」


 壮馬は、苦笑しながら前置きをした後、


「席の近い紅野さんや天竹さんは、どう? 二人とは、何か話してたんだっけ?」


と、本題に切り込んだ。


「あ〜、紅野さんには、ちょっと失礼なことを言っちゃったから、嫌われたかな〜? あと、天竹さんだっけ? あのは、紅野さんと仲が良いの?」


「二人が、どの程度の仲かは知らないけど、ボクが知る限りじゃ、紅野さんと天竹さんは、一緒に居ることが多いかな? 白草さんは、何か紅野さんを気にする理由があるの?」


「ん〜、『理由がない』と言うと、ウソになるかな?」


 彼女の発言に、壮馬は思わず身を乗り出しそうになるが、白草四葉は、余裕たっぷりの表情で、肩透かしを喰らわせる。


「でも、それは、黒田クンが戻って来てから、話しをさせて」


 ちょうど、その時、玄関のドアが開き、


「待たせたな〜」


と言いながら、竜司が戻って来た。


「おかえりなさい! ありがとう黒田クン」


 四葉が、愛想よく返答すると、


「おう、アイスを食べたくなったら、いつでも言ってくれ! 部屋に取りに行ってくるからな」


竜司は、明るい調子で返し、「じゃ、手を洗ったら始めるか?」と二人に確認を取った。

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