戦争
戦争は造られた。
世界を守るために。
戦争が止むことのない世界。
兵器と兵士を投入し続け、人は死に続け、科学技術だけが肥大化した人類はゆるやかに滅びへと向かっていた。
あまりにも疲弊しすぎたために、戦争によって得をする国などもう存在しない。
しかし、これまでに殺された同胞達のことを思い、民衆は戦争継続を望む。
損得よりも感情が先に立つ。
もう止める術は無い。
そこで、国のトップ達は極秘裏に取り決めた。
今行われている戦争を、全て架空のものに置換するのだ。
報道用の戦場の映像は、全てフェイクの合成映像に差し替えられた。
徴兵された兵士達は、着用が義務付けられたヘルメットにより、現実と見紛う映像と音声を見せられる。
ヘルメットに仕込まれた装置が見せる拡張現実の中で、存在しない敵兵士との戦闘を行った。
戦果も偽装された。
戦死者数も偽装された。
兵役から帰ってきた人間は、『幸運なことに、自分の部隊では同胞は誰も死ななかった』と喜んで語った。
全てを知る為政者たちは、この偽装を存続させるために、命がけで演技を続けた。
今日も人類の頭の中で、戦争は続いている。
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