機械じかけのエトセトラ

空殻

吸血鬼

吸血鬼は造られた。

二度目の大戦の折、ある大国の軍事研究機関にて。


初めはただ、人を超えた兵士を造ろうとしたのだ。

超人のモデルケースとして、吸血鬼の幻想を参考にしただけだった。

空を飛べたらいい。

体が変化できたらいい。

怪力を発揮できたらいい。

常識から外れた生命力があればいい。

そんな願望、空想の果てに、それは造られた。



そして、完成した。

求める性能を備えた、超常的な生命体。

ただ、決定的に欠如していたのは、倫理観だった。

機械じかけのそれらには、油が必要だった。

歯車を動かすために、その肉体の組成によく近い油が必要だった。

人の血だった。


大戦の混乱の中、人造の彼らは消息を絶った。


彼らは必要な資源を自力で調達するプログラムを搭載している。

だから、彼らは血を求める。

自らを駆動させ続けるために。




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