さすらいのおっさん
みそささぎ
商談1 鯨の町
俺は
今日は店の商品を売り込むために誕生町へ来たが、先方との待ち合わせまで時間を持て余している。しばらくこの町を観光しようか。
せっかくなので、この町の観光地であるくじら博物館へとやってきた。建物は平屋なのだが、異様なほどに横長なのが目につく。真相が気になる。
館内へ入ると、木造の伝統的な内装が
その他、捕鯨にまつわる道具や町民の暮らしなど、歴史的な資料が多数展示されている。しかし、それらの紹介は時間の関係上
館内には、
「......おや?」
俺はある物に注目した。それは指揮棒のようにしなやかな棒状のもの。これは一体何だろうか?
「それは鯨の
店員は物珍しそうな顔で見ている。どうやら、これに食いつく俺も変わり者のようだ。このしなやかさ、何かに使えるかもしれない。秋子には怒られるかもしれないが、一括購入しよう。きっとマニアに売れるはずだ。
「......ええぇ!?」
店員は唖然としている。これを買う俺がそんなに珍しいか? それと、くじらのたれも買うことにしよう。これは後で俺が食べる。
土産物の次は飲食店だ。正直、あまり腹は減っていないのでスイーツでも食べようか。なるほど、地元産のびわを活かしたソフトクリームとは
「......おおぉ!?」
びわ特有の濃厚な甘味が口いっぱいに広がる。俺の心は南国気分だ。するとその時、俺のスマートフォンに着信が入る。
「......え、ええ。急用でリスケ。分かりました」
先方に急用が入り、営業は明日へ延期。仕方ないが、こういうときもある。しかし、そんなことで落ち込む俺ではない。
「よっしゃ! 釣りだ釣りだ!」
忘れてはいけない。誕生町はシーバス釣りのメッカでもあることを。俺はさっそく、港へ向かった。
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