第2話
「だから、違うって言ってるでしょ。クリスティーヌ」
だから、私はエディとクリスティーヌの間に身体を入れて、割って入った。すると、クリスティーヌはおもちゃを取られた子どものようにとても不満そうな顔をした。
「そうです、ボクらはこれを取りに来たんです」
エディはボールをクリスティーヌに見せた。
「これは?」
「バイデル様の愛犬カスタードのお気に入りのボールです」
「あっそ」
クリスティーヌはボールには全く興味を持たなかった。
「そっ、それより、アナタこそどうしてここにいるのよ?」
私はクリスティーヌに反論と言わんばかりに尋ねる。確かに彼女がこの場にいるのはとてもおかしいことだ。だって、姉の婚約者の家に一人で妹が訪問するなんて。
「あぁ、やだやだ。おばさんみたいに変な勘繰り入れるなんてはしたない。でも・・・ふふふっ。これで・・・・・・」
クリスティーヌは私を見た。
いつものように何か悪だくみした顔だった。
「ねぇ、お姉様? このことは黙っていますので、それをくださらない?」
そう言って、クリスティーヌは私の髪をかき分けて、私の右耳を触り、手を滑らせてイヤリングを触る。
「駄目に決まってるでしょっ。これはお母様の形見・・・・・・それにあなただって、持っているじゃない」
彼女のロール髪が揺れて、ちらっと髪に隠れた中からイヤリングが光る。お母様の形見として、私とクリスティーヌ、それぞれが分け与えて貰ったのだ。さすがに妹のクリスティーヌに大甘なお父様だってそれを許すはずがない。
「ちっ」
悪人のような顔でクリスティーヌは口を鳴らす。
「まぁ、いいわ。このことはバイデル様にお話させてもらいますわ」
そう言って、階段の方へと向かうクリスティーヌ。
「クリスティーヌっ」
私は彼女の背中を呼び止めると、嬉しそうな顔をしながらクリスティーヌが振り返る。
「もしかして・・・・・・バイデル様を奪い取る気?」
「さぁーーー?」
そう言って、わざとらしく目を逸らすクリスティーヌ。
「でも、恋ってわからないじゃない、お姉様?わたくしが、求めなくても、バイデル様の方から求められてしまうかもしれないし・・・・・・お姉様より優れた女性がバイデル様の目の前に現れたら、バイデル様はどうなってしまうのかしらーーー」
「悪いことは言わないわ。バイデル様は止めておきなさい・・・」
「おきなさい?」
私の言葉尻が気に食わなかったのか、ブリっ子な顔をして不思議がるクリスティーヌ。どうやら、クリスティーヌは私がバイデル様を彼女に奪い取られたくないと思って言っている様子だ。
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