いつか誰かの後悔の中で
Fa1(ふぁいち)
第1話 繰り返す同じ日々
俺は誰かのタイムループに閉じ込められている。
毎日必ず同じ時間に目覚め、その日の二十時を越えると目の前が真っ暗になり、また同じ時間に目覚める。目覚める時間は決まって十月二十五日の八時四十八分。大学受験に失敗し、ろくに勉強もしないでフラフラとしていたバチが当たったのかもしれないな。
どんなに特別な行動をしようとも、一日の流れはほとんど変わらず、朝起きて外を出歩き、二十時になると目の前が真っ暗になる。かれこれ五十回も同じ日を過ごしているが、一日たりとも二十時を越えられたことはなかった。
周囲の人間はループ後に記憶がリセットされるらしく、俺が何か行動を起こさなければ全員必ず決まった同じ行動をする。
俺はこのループを抜けるために今までに色々なことを試してきた。話したことのない人と話したり、行ったことのないところへ行ってみたり、逆に全く何もしなかったり…。そのいずれもループを抜け出すことには繋がらず、二十時になるタイミングで目の前が真っ暗になる。記憶を引き継げるという状況を利用して、勉強や運動をしてみたりもしたが、いかんせん『明日』を迎えることができないという現実に向き合った瞬間にその全てが無駄な努力であることに気づいてしまった。結果的に、十数回目のループを迎えてからは、ループを抜けようとすることも諦めてしまった。
そうして迎えた、五十一回目の十月二十五日。いつもと全く同じ行動を取り、あと十分でこの回も終わると思いながら、交差点の赤信号で立ち止まっていたときにそれは起きた。
今までに見かけたことのない女性が道路のど真ん中を駆け抜けていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます