第六十四節 脅威を排除すべき理由
裏から日本を支配する力の源泉であった莫大なお金が、実力で手に入れたのではなく『与えられた』ものに過ぎないという事実に。
加えて自分たちの先祖が、秩序に逆らっていた反逆者……
『賊』に過ぎないという事実に。
人間は誰しも、不都合な真実には蓋をしたくなるものだ。
「京の都に君臨する『戦いの黒幕』となれ。
そして、腐り果てた奴らが権力を握ることを絶対に許すな!」
◇
続いて
見た感じは30代くらいだろうか。
「要するに。
2人の弟である
「そもそも。
源氏は、一つになることができないという致命的な弱点を抱えています」
「それで?」
「平氏を討つために、
どちらも兵からの人気は非常に高かったとか。
加えて。
もし、この2人が莫大な銭[お金]を持っていれば……」
「
「莫大な銭[お金]を持っていれば大軍を養うことすら可能となります。
源氏同士で大量の血を流している間に、公家はかつての力を取り戻せるかもしれません」
「まさか!
「そもそも公家は……
相手を
彼らにとって、
「そうならば……
公家どもが策略を巡らせている中で、
「簡単なことです。
「弱体化を最小限に?
どういう意味ぞ?」
「あらかじめ、脅威になる存在をすべて抹殺しておけば良いのです」
「なっ!
脅威になる存在を『すべて』抹殺するのか?」
「有名な者をすべて抹殺しておき、
「無名な者に人は集まらない。
邪魔になっても、少数ならば『簡単』に片付けられると?」
「はい。
すべての脅威を『徹底』して排除しなければ、幕府の権力を維持できないとの結論に達したようです」
「……」
「こうして
最後は盟友の
「これで公家どもは、武家から政権を奪い返すことができなくなったのだな?」
「はい」
◇
「
そんな話をしている場合か?
明日にでも織田信長が、この
筆頭格の
「
万が一に備え、我らは
「ただし、
信長に内通した者がいる以上……
隠し通路が
「安心なされよ。
教えていないからな」
「それは
「
いずれこうなることを予期しておられたのだろう」
「……」
「ならば良い!
今すぐ逃げ出す準備を致そう。
残念だったな、
いずれ……
我らを裏切った報いを受けさせてやる」
「我らが賊の子孫に過ぎないなど……
わしは絶対に認めんぞ」
「……」
こうして、会合は解散となった。
◇
慌ただしく逃げ出す準備をし、一族を連れて隠し通路にやってきた
他の3人は着いていないようだ。
ただし、
「
後を追いますゆえ、先に行ってくださいませ」
「そうか。
ならば先に行かせてもらおう」
周到な『罠』に
◇
一方。
会合が終わった後……
「
と。
これには
「何っ!?
それは
「
『そんな話をしている場合か?
明日にでも織田信長が、この
と」
「確かに、
「隠し通路には行かない方が良いでしょう。
幸い、まだ信長の軍勢の包囲は『未完成』のようです」
「おお!
ならば、わざわざ隠し通路に行く必要もあるまい。
「その必要はないと存じます」
「何っ!?
「
以前、
『奴は欲が深すぎる』
と」
「ああ、そのことか。
屋号の通り、
大和国は今……
かつて
ところが!
大和屋は兵糧や武器弾薬の
「
そういえば……
こんな噂が流れていますぞ。
『大和屋は、
と」
「何っ!?
それは
「脅威になる存在は、徹底して排除すべきでは?
「それは、そうだが……」
「今こそ。
手を汚さずに脅威を排除する、絶好の機会[チャンス]ですぞ」
「……」
「しかも。
隠し通路が危険と決まったわけではないのです」
「大和屋が無事に通り抜けられるかどうかで、加賀屋が裏切っているかどうかがはっきりするということか」
「はい。
「……」
こういう経緯で
◇
隠し通路を進む
軍勢というよりも野盗の群れのような格好をした兵ばかりであったが。
「それがしは
京の都で最も銭[お金]を持っている商人の一人でもある。
無事にここを通してくれれば……
いくらでも銭をお支払いしよう」
「ほう。
そなたが名高き
銭[お金]を支払ってくれるのなら問題はない。
通られよ」
大将らしき男に話が通じたようだ。
「おお!
かたじけない!
足早に通り抜けようとする大和屋が、大将らしき男と目が合う。
「この大将は小男で、猿のような顔をしているな。
どこかで聞いたことがある武将のような気がするが……
もしや、まさか!」
こう独り言を発した瞬間!
突如として、鉄砲の銃口が
【次節予告 第六十五節 百姓の出身ではない秀吉】
大和屋はこう尋ねます。
「『なぜ』、尾張中村の百姓の出身などと蔑まれることに黙っているのですか?
商人の出身であると、はっきり、堂々と宣言すべきでは?」
と。
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