異端の華 a stage face
鉛筆
第0話 風景
これはとある風景だ。
午後6時頃。辺りは夕焼けに染まっていく中、大通りを歩いていた。
なんとも不思議なもので、この日はいつもよりも早く帰ろうとしていた。そうしなければ自分の心の中にある嫌な予感が当たってしまいそうだったからだ。
帰り道も半分を過ぎた頃、どこからか「ぐちゃり」という音が聞こえた。普段なら無視をしているのに、この時はどうしてかその音に惹かれてしまった。
帰り道を逸れて路地裏に足を踏み込む。
辺りは黒に塗り潰されていて、唯一ある光は天井も何もないところから差し込まれる生暖かい光だけだった。
ただ惹かれるままに歩いていった。
10歩くらいだったはずだ。不意に、ぴちゃりと水溜まりを踏んだ感じがした。下を向くと黒いぬめりとした液体が広がっていた。少し鉄のような匂いがする。
これは血だ。
そこまで思って気がついた。なんでこんなところに血が飛び散っているのだと。
恐怖という2文字が心臓に攻めよせてくる。
駄目だ…この場所にいては。思わず視線をあげると、そこには真っ赤な2つの目があった。
そう。それはいつか見た彼岸花のように綺麗な赤だった。
繰り返そう。これはあくまで視たことのある、とある風景だ。
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