離婚されない条件

ミッシェル

第1話 一平と言う名の男


( 俺の名前は田中一平32歳。

妻とはタメで高校からの付き合いで結婚。

仲良い夫婦生活。

可愛い娘も授かり、バラ色人生。

何も不満はなく過ごしていた。

だが唯一の気掛かり…… それは仕事が忙しい為、家族との時間が少なくなりがち。

そこだけは気になるが、俺は家族の為なら仕方ない。

頑張って稼ぐからな!! )


一平は一般的なセールスマン。

色んなとこへ行き仕事をする。

32歳と言う若さで業務成績優秀。

毎日残業したり人より努力した結果でした。

そんなに真面目かと言うとそうでもない。

家族の為にと一平は毎日頑張りました。

一平は家族の為なら仕事は苦ではありません。


少し悲しく思っていたのは、家族との時間がとてもすくない…… 。

それでも一平は「 家族の為 」 に頑張っていました。


( ママも娘も同じ気持ち。

そう思っていたのが、この最悪な一日を引き起こす切欠になるとは、まだ俺は知らなかった…… 。 )


仕事場でも一平は大人気。

上司には可愛がられ、部下には慕われる。

一平はお喋りで誰とでも仲良くなれる。

だからセールスでお客さんとのコミュニケーションも、問題なくこなせてしまう。


「 先輩。 こんちわ! 」

「 田中さん。 お茶入りましたよ。 」

「 田中くん。 また売り上げ一位だぞ!

私の自慢の社員だ。 」


( こんなに仕事が出来て、家族も居る父親は何処に居る?

離婚されてしまう父親は、本当に要領悪いと俺は常々思っていた。

離婚されてしまう奴なんて、家族への愛がない奴かあまりにも仕事が出来ないのか?

そんなもんだろ…… ? )


一平は酔っていた。

自分のバラ色人生を謳歌し、他人を笑うくらい幸せ気分。

帰るのは遅くなるのは仕事のせいだけではない。

この人間関係の調和の為でもある。


例えば上司との付き合いで飲みに付き合ったり、失敗した部下を励ます為に飲みに。

飲むのも好きだし、みんなに期待されると断れない。

これが一平の大きく駄目な所…… 。

家に帰るのが遅いのも、このお調子者な所が原因なのもある。


休みは出来るだけ家族サービス。

いきなりのトラブルで仕事へ行く日もある。

娘はまだ3歳。

幼稚園に入園したばかり。

一緒に居たいが仕事があるのでそうはいきません。

そう割りきっていました。


( 俺は家族に甘えていた。

家族なら分かっていると…… 。 )


ある日の日曜日…… 。

いつものように仕事の疲れを癒し、昼まで寝ていると。


「 パパ遊んで! 」


可愛い愛娘。

田中愛菜たなかまな3歳。

休みはパパに遊んで貰おうと朝からおねだり。


「 パパは今はお休み中〜〜 っ!

お昼は外食でもするかぁ!

それまで寝かせてねん…… ぐぅ。 」


疲れていて無理矢理寝ようとしてしまう。

愛菜も必死に布団を剥がして起こそうとする。


「 ヤダヤダ!

パパは先週朝から遊ぶって言ったよ?

だから遊ぶの! パパーーっ!! 」


凄く疲れていたのでしょう。

必死に揺すりましたが深い眠りへ…… 。

予定通り昼過ぎまで寝てしまいました。

14:00近くまで寝て、お昼でもありませんでしたが疲れも取れて、そこから歯を磨いたりして身だしなみを整える。


「 いつもお疲れ様っ。 」


( 優しく微笑みながら声をかけるのは、俺の最高な嫁。

田中美咲たなかみさき

優しく俺の事をいつも理解してくれる。

黒い長い髪が特徴的で一目惚れ。

直ぐに告白して付き合い、そのままゴールイン!

俺は何て幸せもんなんだろうか…… 。 )


そう思いながら顔を洗い終え、タオルを受け取り顔を拭く。


「 そりゃ当然だろうよ。

毎日汗水流し働いてるんだからな。

一家の大黒柱は辛いぜぇい!! 」


と笑いを交えながら作ってあったご飯に手をつける。

相変わらず料理も手を抜かず、いつも美味しいご飯を作ってくれる。

大食いなのでばくばくと食べ、お味噌汁も飲みながら。


「 ん? 愛菜はどうしたん??

見当たらないけど? 」


いつもなら休みは何処かに連れてってとうるさい愛菜が居ません。

気になり聞くと呆れた表情をして返答する。


「 あまりにも遅いからつまんなそうに庭で遊んでたら、お隣さんに誘われてお出かけしたわよ。 」


呆れながら立ち上がり、家事をする為にそこから離れる。

一平は食べながら思うことが…… 。


( 愛菜ちゃんも冷たいぜ。

少しくらい待っててくれても良いのに。

にしてもお隣さんってあの…… コアラ野郎か? )


一平の幸せな食事が台無しに。

イライラしながら食べ進める。


隣のコアラとは村上奨むらかみすすむ35歳。

同じ3歳の娘が居て娘同士は仲良し。

いつも遊んでいる。

身長180もありいつもニコニコ笑っていて体格もデカイ。

一平は身長169センチで差が凄い。

コアラへの嫉妬心がある。


さらに優しくて一平と違い、仕事より家族を優先して毎日直ぐに帰宅して家族団欒。

休日は娘や奥さんの為に家族サービスをこなす。

一平は嫉妬しやすく、コアラみたいに出来なくてコアラが嫌いだった。


「 あんなデカぶつ野郎…… 。

人様の娘の好感度上げて何考えてんだか。

今日はガツン!っと言ってやる!! 」


逆恨みも良いところ。

ご飯を食べ終えてイライラしながら娘の帰りを待ちました。

一平は娘が大好き。

コアラに懐くのを嫌いました。


「 コアラとか言わないの。

きららパパは何の悪意とかもないの。

悪く言わないんだよ?? 」


村上きらら。

コアラの3歳の娘。


( 何言ってんだよ。

ウチの娘を手懐けて俺より好感度を上げて、しかも嫁の好感度も上げる…… 。

ほっといたら何するか分からん!

あの笑顔も胡散臭いだよっ!! )


愛する妻を盗られるかも!?

なんて無駄な妄想を膨らませ、イライラを加速させて行く。


すると家の前に車が止まる。

娘が帰って来たのだ。

勢い良くドアを開けて帰って来た娘。


「 ただぁいまぁ!!

今日ね、今日ね、凄い色んなとこ連れてってくれたんだよ。

モンキーバナナくんも見てね。 」


愛菜は必死に楽しかった事を話す。

ママは笑いながら話を聞きながらうなづく。


「 愛菜ぁ〜〜 っ。

お帰りなさい。 パパ起きたからどっか行こうか?」


一平は必死に好感度を取り戻そうと話す。


「 パパおはよう…… 。

疲れてるんだからもう少し寝てたら?

パパ寝るの大好きだもん。

もう沢山遊んで疲れたぁ〜 。 」


そう言いママと居間へ。

一平の怒り爆発!!


「 コアラぁ〜〜っ!! 」


逆恨みして叫びながら外へ。

丁度車から降りていたコアラと目が合う。


「 やぁ、一平くん。

愛菜ちゃん寂しそうにしてたから、きららと出掛けるからついでに連れてってしまったよ。

ちゃんと愛菜ちゃんママもどうぞって。 」


いつものようにニコニコしながら話す。

一平は握りこぶしを作りながらイライラする。


「 だ…… だからと言って休日の娘とのふれあいの時間を奪う…… 。

節度を守ったらどうだい? 」


イライラをおさえながら話しました。

本当なら殴り飛ばしたい…… 。

でも小心者なのでやり返されたら怖いので、いつも控えめにしか言えない。


「 お疲れだったんだろ?

お互い助け合いだよ。

ついでだったんだから気にする事ないよ。

これから家で手巻き寿司の準備だ。

それではまた!! 」


そう言い家へ帰って行きました。

呆然と立っている一平。

悲しそうに家に帰って来る。

廊下を歩き居間へ向かうと、声が聞こえてくる。


「 きららちゃんパパね、美味しいの沢山食べさせてくれてね、それでね。

それでね…… 。 」


「 うんうん。

それでどうしたの?」


楽しそうに話すママと娘。

一平はこっそり聞いている。


( にゃろう〜っ!!

あいついつか絶対ボコボコにする。

手巻き寿司だと??

しょうもないんだよっ!! )


一平は家族がコアラに心が動いているような気がして、激しく動揺するのでした…… 。

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