第16話 脱出
一樺は手首にある鎖を見つめため息を吐いた。
「……どうしよう流石にもう紗理那が心配するだろうし……」そう呟きながらぼぅっと天井を見つめた。手を動かせばカシャリと硬い感触の音が鳴った。一樺はちらりと鎖の方を向けば目を閉じそっと詠唱を始めた。『光よ。我を縛る鎖を切りたまえ ーリュミエール ラーマー』そう唱えると光の刃が一樺を拘束していた鎖が音を立てて切れた。一樺はため息を吐き立ち上がればそっとドアに手をかけた。「……紗理那になんて説明しようかな……」そう呟き一樺はそっと保健室から出ていった。
保健室から出て数分後、一樺は寮へと戻った。
「まさか先生もこの痕を持っているなんて……」その言葉は空へと消えた。するとがチャリと音を立て寮の部屋のドアが開いた。一樺は警戒するようにドアを睨みつけた。すると入ってきたのはルームメイトで友人である紗理那だった。一樺は安心した表情を浮かべたあと小さく息を吐いた。
「一樺!保健室に行ったら居なくて心配したんだから……!あっこれ一樺の荷物。教室に置きっぱなしだったよ」
「紗理那……うんありがとう。心配かけてごめんね実は……」一樺は先程あった事を紗理那に説明した。保健室の教師が自分と同じマリアに愛された者だと。そして自分は拘束されていたがなんとか抜け出したことを説明した。紗理那は信じられないと言った表情を浮かべていた。
「先生にも痣が?ほんとなの?」
「うん……先生からすれば私はイレギュラーな存在らしいし。お父さんから聞いた話も知ってた」
「なるほど……一樺は暫く保健室行くのやめた方がいいかもね。治癒魔法ならある程度は治せるだろうし」
「……そうだね。」そう話して一樺は笑みを浮かべた。明日からどうしようかと考えていれば紗理那はそっと一樺の手を握った。「大丈夫。私が守るから。友達だもん」と笑いながら紗理那が告げた。一樺は瞬きをしたあと笑みを浮かべ力強く頷いた。
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